第五章 レクイエム

第6話 1/2/3/4

`呪い?`

ジャドールが掛けてくれた魔法を思い出した。
あれが呪いだったのか?

「まあ、でも生きていることに感謝しなよ。
あんな酷い呪いは俺の人生の中で始めてだったんだ」

しばらくライを診察した彼はため息を吐く。

「名前を分からないから、なんと呼べばいいか、困ったもんさ。
俺はグスタフだ。
ここはブリア村で…
どうやってここまで来たのかは君自身がよく知っているだろうね。
自分の足で入ってきたから」

ライはゆっくり頷いた。
最後のチャンスと握るため、ダークエルフの貴族を殺すため来たけど誰かに邪魔されて意識をなくしたことを思い出した。
誰なのかははっきりと覚えていないが、とても腕の立つ実力者だった。
ジャドールの魔法によって死ぬところではあったものの、魔法の効果はとても凄かった。
強い力が体から溢れ出し、体も軽くて動きも風のように早くなった。
それなのにその人は自分のすべての攻撃を防いだ。
普通の自分の実力だったら、きっと彼に殺されたはずだと思うと体がぞっとする。

「君の罪はまあ、いつか君がその代価を払うことになるだろうけど、今はまだそんな時期じゃないと思うから、気にするなよ」

ライの顔を見たグスタフは、誰か自分を罰するかも知れないとライが怯えているとでも思ったらしい。

「誰であれ、俺のところで患者には指一本触れさせないよ。
うむ、大船に乗ったも同然よ!」

グスタフは自分を信じろというように大声で言った。
ライは背の低いハーフリングの老人が自分を助けてあげるというのがちょっと可笑しかくて少し微笑んだ。

「笑うほうがよっぽど綺麗じゃないか。
君は寝ていた時も全然寛いでいるようには見えなかったな。
不安で悲しむ表情だけだったよ。
君がどんな人生を生きてきたのかは分からぬが少なくとも眠っているときには幸せじゃないとな。
人生って苦しいことが多いが、いつもそんな顔だと、老いてから大変な顔になっちまうよ」


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