第五章 レクイエム
第5話 1/2/3/4 お袋は俺がイグニスの地下牢獄に閉じ込められていることなど、夢にも思っていないだろう… クレムにも何一つも言わずに来たし… 俺がダークエルフと関わりたくないからどこかへ逃げたんだろうと愚痴を言っているだろう。 忙しかったとしてもクレムだけには話しておいたほうがよかったかも知れないな。 アイツとは昔からの友達だから… 何も言わずに一人でここまで来て、牢に捕らわれたと知ったら多分怒るだろうな。 「おぬし、頼みたいことが一つあるのだが… 聞いてくれないかね?」 「俺にできるかどうかは自信ありません。 いつここから出られるかもわかりませんし」 「おぬしとワシの間にある壁の隙間にワシが手紙を入れておいたのだ。 出られるようになったら、その手紙をカイノンにいるイェレナに渡しておくれ」 「何でいきなりそんなことを…」 その時ナトゥーの視野に、黒い兜のダークエルフの警備兵二人が入ってきた。 「おい、ハーフリングのじじ。 君に会いたいという方がおられる」 「そうかい? ワシと会いたいとは何のことだろうね」 ダークエルフは牢獄の扉を開き、ベロベロを出るようにした。 その時になって、やっとナトゥーはベロベロの顔を見ることができた。 堅い顔の細身のハーフリングだというナトゥーの予想とは違って、丸い顔が雪のような真っ白な髭に覆われていて暖かい印象を与える。 ベロベロはナトゥーに向かってウィンクして、自分を迎えにきたダークエルフの警備兵の後ろについて消えた。 ベロベロと黒い兜のダークエルフの警備兵が階段に登った後、青い兜のダークエルフの警備兵二人が降りてきて、見張りのために用意された中央のテーブルに座り、酒を飲みながら喋り散らし始める。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |