第六章 嵐の前夜
第10話 1/2/3/4/5/6/7/8 「オルネラ、どこ行っていたの?」 ジェニスがそう聞いたが、幼い娘は何も言わずに、自分の前に置かれた料理をもくもくと食べるだけだった。そんな子供をしばらく見つめたジェニスはため息をついて、聞こえるような、聞こえないような声で言った。 「オルネラは自ら口を閉じてしまったわ。精神的なショックが大きかったみたい」 「なにがあったんですか?」 ジェニスは一層小さい声で言った。 「まだ子供なのに…両親を亡くしたのよ。目の前で…」 急にガシャンと音がなってジェニスの言葉が途切れた。ジェニスとトリアンはびっくりして音がなった方へ振り向いた。オルネラが空になった皿を落として立ちつくしていた。ジェニスは急いで椅子から立つと、オルネラに近付いて彼女を抱き上げた。 「大丈夫?オルネラ。お皿を洗い桶に置こうとしたら手がすべってしまったのね。大丈夫よ。ママを手伝おうとしてくれたんだね。割れたお皿は新しい物に替えればいいから、気にしないでね」 ジェニスがなだめる間にも、オルネラは固まっているようだった。オルネラの顔を覗いていたトリアンは彼女の瞳が恐怖で満ちているのに気付いた。 「オルネラを寝室に送ってくるから食事をしていてください。ごめんね。お客さんを一人にさせて・・・」 「いいえ。オルネラをよろしくお願いします」 ジェニスはトリアンにもう一度謝ってからオルネラを抱いたまま階段を上った。トリアンは席から立ってオルネラが割ったお皿を片付けた。小さい欠片まで綺麗に片付けてから席に着くとジェニスが降りてきた。 「お皿はそのままで良かったのに・・・」 「いいえ。一人で食べるより一緒に食べたほうが楽しいですし、待っている間、暇だったので片付けてしまいました」 「ありがとう。さあ、冷めないうちにどうぞ」 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |