第六章 嵐の前夜

第12話 1/2/3

「何だ?」

「ここから消えろ、ジャイアント。二度とイグニスの地に足を踏み入れるな。お前の王にも伝えろ。うちにはジャイアントの助けなんか必要ないと」

黒い仮面をかぶった人はナトゥーにイグニスから出る事を命令した。ナトゥーは軽蔑するような彼の言い方に怒りを覚えた。

「ここから逃がしてくれるのはありがたいが、口が汚いな。ダークエルフっていつもそんな言い方をするのか?」

「お前の為ではない。これ以上は言わない。ダークエルフはジャイアントと交流しない」

「おい!ダークエルフと交流するのは俺も反対しているんだ。ジャイアントもダークエルフの手など借りるつもりはない。」

黒い仮面を被った男は何も答えずに後ろ向いて消えてしまった。まるでナトゥーの存在すら認めないかのように。ナトゥーは怒りがおさまらず、その場で立ちっぱなしだったが、遠くから近づいてくる警備兵を見つかり、隣にあった木の上へ登って隠れた。

スタッフを手にした二人の警備兵はナトゥーが隠れていた木の下を通り過ぎた。辺りを警戒しながら歩いていたが、ナトゥーには気がつかなかったようだった。

目に見えない距離まで警備兵が去ってからナトゥーは木から降り、霧の向こうに見えるモントの城を憎悪が混じった目で睨み上げてから北へ向かって歩き出した。自分がいる場所についてはっきり分からないが、北へ向かえば間違いはなかった。

北の方向を確認したナトゥーは少しでも早くモントから離れたくて急いで足を運んだ。モントはイグニスでも一番南に位置していて、国境線まではかなりの距離があった。自分が脱出したことがばれると国境線の警備が強化されるかもしれない。ダークエルフと会わないことを望みながら月光に照らされた道を走り出した。

‘ダークエルフと秘密契約は必ず阻止すべきだ。あいつらはいつか我々の背中に刃を刺す存在だ。しかし政治家のやつらが俺の話を聞いてくれるかが問題だ。ちくしょう!フロイオン・アルコンの行方はまったく分からないし…’

その瞬間ナトゥーの足が止まった。


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