第六章 嵐の前夜

第13話 1/2/3/4/5

「ロレンゾ・パベルと申します。この子は息子のガラシオンです。よろしくお願いします。グスタフさんからお話しを聞いております。呪いをかけられていますね」

朝食が終わって1時間位経ったとき、紫色の瞳に銀髪の穏やかなエルフが、黒い髪の毛に青くて灰色の瞳のエルフの少年と一緒に部屋に入ってきた。ライは銀髪のエルフの自己紹介を聞いて、彼が噂の「青いマントの医者」だと分かった。

「エルフから治癒魔法を受けたことがありますか?」

ライは首を振った。エルフが治癒魔法を唱えることを見たことがない。

「私達は魔法の力で人を治癒しています。まずは現在かけられている呪いについて調べる必要がありますので、治癒魔法の前にちょっと調べさせていただきます。痛くはありませんが、初めてみる方は驚いたり恐れたりしますが、絶対貴方に悪いことはしませんので、どうか私を信じてください」

ライは頷いてロレンゾの指示通りベッドの上で横になった。ロレンゾは両手でワンドを握ると、ライの体の上に手を伸ばし呪文を唱え始めた。ワンドから流れ出た白い光は、ライの体に染みこみ全身が光り始めた。

ライは体中から日差しのような暖かさを感じた。体の隅々まで広がった光はまた一箇所に集まり始めた。光はライの首あたりに集まると、いつの間にか首を囲むように光っていた。

ロレンゾは唱えていた呪文を終えてライの首辺りへワンドを近づけた。ほのかに光っていた白い光はワンドが近づくことによって様々な色に変わり続け、段々黒くなった。ロレンゾの口からうめき声が漏れた。だんだん黒くなった光はいつの間にか黒い霧のように変わってライの首を巻いていた。

ロレンゾがまた呪文を唱え始めると黒い霧はロレンゾのワンドへ吸い込まれ始めた。すべての黒い霧がワンドへ吸い込まれた後でもロレンゾは何もしゃべらなかった。

「どうだ?思ったより酷いのか?」

グスタフが静かに聞いた。ロレンゾは何も言わずにうなずいた後、ライに聞いた。

「この呪いをかけたのは…ダークエルフ…ですか?」


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