第六章 嵐の前夜

第14話 1/2/3

「なに??!!」

セルフが立ち上がり叫んだ。

「同じハーフエルフがハーフエルフを殺したと?!今正気で言っているのか!!??」

「俺はハーフエルフだと言った覚えはない」

「殺人犯は我々の中にいると言ったじゃないか!同じ事だぞ!!」

興奮したセルフにゾナトは注意をしつつカエールに聞いた。

「我々の中にいるが、ハーフエルフではないとはどういうことだ?」

「ハーフエルフのふりをしているけれど、ハーフエルフではない存在がいるということです。」

ゾナトはやっと気付いたという表情で言った。

「ハーフエルフのふりをして我々の中にもぐりこんでいるエルフがいるってことか?」

「ええ、その通りです」

「どうしてそんなことができるの?」

アリエは信じられないという表情を浮かべていた。

「俺達はエルフとヒューマンのハーフだけど、見た目はエルフと変わらない。違いは魔力が弱いということぐらいだろう。今も新しいハーフエルフ達がここ、カイノンにたどり着いている。俺はカイノンに戻るたび見慣れない顔を見かけるんだ。

同じハーフエルフということだけで、なんの疑いもなくカイノンに入れているけど、実際は誰が過去に何をしていたかに関しては何も知らないんだ。俺達は皆お互いの事をよく知っているふりをしているが、実際は赤の他人なのさ。ハーフエルフのふりをしているエルフが潜り込んでも、俺達はハーフエルフだと信じてあげるしかない」


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