第六章 嵐の前夜
第5話 1/2/3 「最初の試験は灰の戦場に入り、最後まで生き残った方の勝利となる試験です。もし、試験を放棄する場合は、私が差し上げた腕輪を取って地面に投げ落として下さい」 監督官は自分の髭を撫でつづけながら、キッシュとドビアンに王位継承者を選ぶための第一試験の説明をした。キッシュは目の前に見える灰の固まりになった樹木が生い茂った島を見つめた。 本来、灰の戦場は鬱蒼とした森であった場所で海沿いの塩辛い風のせいで葉っぱに塩気がくっつき、白い島と呼ばれていた。しかし、ダンとデカンの戦争の中、ダン族の暗殺者達がデカン族の国王であるフェルデナント・ドン・エンドリアゴを暗殺するために首都に潜入したところ、近衛兵たちと警備兵に発覚され、失敗に終わる事になった。 デカンの兵士達はダン族の暗殺者を追って、彼らを首都の北にある白い島の森の中に閉じ込める事には成功した。だが、森の中に隠れているダン族の暗殺者たちを捕まえに行ったデカン族達は暗殺者にことごとく返り討ちにあった。 森の中で捕まえるのは困難だと悟ったデカン族達は暗殺者達を外に追い出すために森に火をつけた。しかし、ダン族は最後まで森の中から一歩も出ず、全員壮烈な最期を迎えた。 その後、長い月日が経ったが、灰になった森はダン族の怨恨が残っているせいか、再生されないままいまだに陰惨な気配を吹き出していた。この時から白い島は灰の戦場と呼ばれる事になる。 「島の中に入れる場所は東側と西側にある橋だけです。各入り口には警備兵たちが守っているはずですから、こっそり出ようという考えは止めたほうがいいです。 また、万が一の事態に備えて、総司令官であるバハドゥル様が兵士達と共に陸地の方から島の周りの警備を強化しています。それと、基本規則は必ず守って頂きます」 「基本規則とは一体どんな物でしょう。」 監督官の説明を聞いていたキッシュとドビアンが同時に振り向いた。するとそこには、侍従を同行して歩いてくるカルバラ大長老の姿があった。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |