第六章 嵐の前夜

第8話 1/2/3/4

夜空には星がきらめいて、月は星たちの間をゆっくり進んでいた。聞こえるのは風の吹くままにしなる草葉の音と、
小さい虫たちのか弱い鳴き声だけだった。

「しかし、君は一日中図書館で何をしていた?お昼には帰っていたのにずっといなかったから…母上に聞いてみたら図書館に行っていたらしいじゃないか」

「調べたい事があって国立王室図書館に行っていたけれど、結局、何も捜せなかった」

「何を捜していた?」

「へルラックの予言書」

急にジフリットが止まった。エドウィンは、気まずそうな表情でジフリットを見つめていた。

「エドウィン」

ジフリットは緊張した顔でエドウィンに静かに言った。

「もしかして、君がヘルラックの予言書を捜しているという事を知っている人はいるか?」

「いや、図書館で司書に捜してみてほしいと聞いた以外には、誰にも言った事ないけれど・・・どうした、兄上?」

「司書だけなのは確かか?」

エドウィンは首を縦に振った。ジフリットの額にはいつのまにか汗が浮いていた。

「よく聞け、エドウィン。絶対それを捜そうとするな。特にデル・ラゴスの中で君がそれを捜そうとしているという事を誰にも言ってはいけない。分かったか?」

「兄上は… もしかして、ヘルラックの予言書に関して何か知っているのか?」

ジフリットはエドウィンの両肩を強く握りながら言った。

「もうヘルラックの予言書という単語を口にしないと約束してくれ、エドウィン」

「俺がそうしなければいけないもっともな理由を教えてくれないと約束はできない」

ジフリットはエドウィンの両肩から手を離して、周りを見回してから大きくため息をついた。


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