第六章 嵐の前夜

第14話 1/2/3

アリエはゾナトを止めてほしいと言わんばかりの目つきでカエールを見つめた。カエールはしばらくアリエを見つめてからアリエの肩を抱きながら言った。

「軍長の意思はよく分かりました」

「カエール!?」

「軍長の計画に従います」

「ありがとう、カエール。君が居てくれて心強い。君が必ず犯人を見つけてくれると信じている」

アリエは仕方がないという表情でため息をついた。カエールはアリエをあやすように肩を抱きながら強く揺さぶった。

「しょうがない。もう軍長が結婚式をあげるという噂も流れている。罠であることに気付かれないようにしっかり準備をするしかない。それでは私は軍長の結婚式の準備に…」

セルフが席を立ちながら言った。三人はセルフに挨拶をし、セルフは会議室を立った。会議が終わったと思いアリエが立とうとした瞬間、カエールが彼女の腕を引っ張り、そして座らせた。

「まだ終わってない」

「じゃあセルフを呼んでこないと…」

「これから話す事は知っている人が少なければ少ないほどいい」

カエールは振り向いてゾナトを見つめながら言った。

「軍長が囮になるという事に関してはこれ以上議論の余地はありません。しかし、出来る限り危険は避けるべきだと思います。そこで私の考えを聞いてみていただけませんか?」

「言ってみろ」

「魔法を防ぐことができる鎧を必ず着てください」

「そんなのがあるのか!?」

アリエの質問にカエールが頷いて説明した。

「ダークエルフとの国境線に近いハーフリングの村ではもしもの事態のために魔法を防げる鎧を一戸に一つずつ持っている。魔法攻撃を完璧に防げるわけではないが、その攻撃によるダメージを緩和させてくれると言う。もちろん、軍長の結婚式で犯人が魔法で軍長を攻撃する前にこの私が先に見つける。しかし、実際には何が起こるかわからない。『保険』という意味でも軍長にはその鎧を着ていただきたい」

「最低限の安全対策か。よかろう。君の要求に応えよう、カエール。しかし、その鎧をどこで手に入れられるんだ?結婚式は5日後だが、ハーフリングの村だと片道だけで5日もかかってしまう」

「エレナがいるじゃないですか!あの人なら5日でその鎧を作れるはずです」


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