第六章 嵐の前夜

第4話 1/2/3

「カイノンに滞在しているエレナからたまに連絡が来るが、一昨日に届いた手紙によると、近いうちにハーフエルフの代表であるゾナト・ロータスの結婚式が行われるらしい。

その結婚式が終わるまで、出来ればカイノンには来るなと書いてあった。いったい何が起きているのかはわからないが、エレナの情報はいつも正確だ。気をつけたほうが良い。」

「なるほど…。しかし奇妙ですね。お祭りであるはずの結婚式で身を案じなければならないとは…」

「最近、カイノンで結婚式をあげていたハーフエルフの新婦達が次々と殺された事からそうなったようだ。」

ガラシオンとロレンゾは驚いて食事を止め、グスタフを見つめた。

「ハーフエルフの新婦達が殺されるなんて…どういう事ですか?」

「うむ…北の方にはまだ知られてないようだな。何週間か前、ハーフエルフ達の結婚式で新婦達が凄惨に殺された。誰の仕業かはわからないが、腹に大きな穴を開けられウェディングドレスを血に染めて死んでいったようだ。近寄った人もいなかったのにやられたというのは、明らかに魔法の力だろう」

「誰がそんな残忍な…」

「分からん。ただ、全部で5人も新婦が殺されたのだ。ハーフエルフ達がじっとしているわけがない。ガラシオン、スープのお代わりはどうだ。」

グスタフの訪ねにガラシオンは首を横に振りながら大丈夫と言った。

「いえ、お腹いっぱいです。どうもご馳走様でした。久しぶりに食事らしい食事をした気がします。本当に美味しかったです」

「それはよかった。口に合わないかと心配したぞ…。夜も深くなったな。疲れているだろし今日はもう休んだほうがいい。2階の西側の部屋が空いているから、その部屋を使うといい。それと、何日か滞在すると言ったが、うちに泊まるといい。人の出入りが激しい宿屋では、落ち着かないだろうからな。」

「ありがとうございます。ところが、東側の部屋には患者さんがいますか?」

「ああ、そうさ。その患者を君に頼むところだった」

「なんの病気ですか?」

「病気ではない…呪いだ。」


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