第六章 嵐の前夜
第2話 1/2/3/4/5/6 エドウィンは司書に感謝の言葉を述べ、図書館を後にした。 着いたころには、青色だった空もいつの間にか赤く染められている。 図書館をでたエドウィンがふと後ろを振り向いて図書館を眺めた。 石灰岩の雄々しい建物が夕焼けの色を浮かべている。 国立王室図書館は5代国王ダンカン・デル=ラゴスが残した唯一な業績の産物である。 彼は非常に感性的な人物だった。 王妃シィルラが王女トリキアを生んで死んだ後、彼は王女を女王に育てることに自分の生涯を捧げた。 他の王族や臣たちは国王に新しい妃を娶り、王子を産むよう訴えたが彼はいつも断るばかりだった。 王女が玉座に座れると考えた彼は、トリキア王女に帝王学を学ばせた。 国立王室図書館が建てられた理由もトリキア王女が常に学問を接することができるようにするためだった。 そんな熱情的な父性愛の結果、トリキア王女は信仰の守護者と呼ばれる最初の女王トリキア・シィルラ・デル=ラゴスとしてデル・ラゴスの第6代国王に就く。 ドリキア・シィルラ・デル=ラゴスはアインホルンの神殿を増築して大神殿にし、辺境の民も常に信仰を身につけられるよう国内のあらゆる場所に小規模神殿を建たせた。 また、神学者を養成するためトリキア神学校を建て、現在の宗教学の基盤を築き上げられるよう神学者の研究に支援を惜しまなかった。 今デル・ラゴスでもっとも名誉なる地位だと言える聖騎士もまた彼女の治下で作られたものである。 それ以外にも聖君とも呼べる数多くの業績を残したものの、デル・ラゴスの民はトリキア・シィルラ・デル=ラゴスを聖君とは思わなかった。 それは彼女の過激な宗教改革のためである。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |