第六章 嵐の前夜

第7話 1/2/3/4

アリエの話に頷くカエールを見ながらゾナトが言った。

「我々はこの事がエルフの仕業と思っている」
「そう思う根拠でもありますか?」

カエールの質問にセルフが声を荒げて言った。

「こんな真似するようなやつらはエルフ以外にいないんだよ!」
「これは簡単に見逃せる問題ではないんだ。戦争にまで拡大する恐れがある。だから慎重に行動しないといけない。中途半端に矢を飛ばしたら、我々にとっても望ましくない結果が待っているだろう」

カエールの厳しい指摘にセルフは口を黙って頭を下げた。

「根拠はない。だが、結婚式で新婦のお腹に穴を開けるという行為に儀式的な意味があると考えている。生命が宿る部分を攻撃しているということは、我々の子孫の繁栄を妨げようとしているんだろう。ヒューマンとエルフにとって、ハーフエルフの子供の誕生が好ましくないことは誰もが知っている事実だ。そして、魔法を使ったという事からヒューマンではなく、エルフだと思ったのだ」

ゾナトの説明にカエールは同意しながらも、自らの見解を述べた。

「エルフの仕業と思われる所がもう一つあります」
「何だ?」
「周りにモンスターも何もいなかったという所です」

ゾナトはよく理解ができないという表情で、カエールの説明を促した。

「殺人者は我々の中にいるという事です」


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