第六章 嵐の前夜

第9話 1/2/3/4/5/6

朝食を準備するためにキッチンに入ったグスタフの目が大きくなった。食卓の上には搾りたての牛乳と暖かいスープ、そしてふんわりとしたスクランブルエッグが彼を待っていた。その隣にエルフならではの優雅な書体で書かれているメモ1枚が置かれていた。

‘台所にある食材で簡単に朝食を作ってみました。家主の許可も得ずにごめんなさい。宜しければ召し上がってください。量は余裕があるはずなので、2階の患者さんにも分けてください。私はガルラシオンと魔法のトレーニングをしにいってきます。朝露の消えるころにまた戻ってきます。’

グスタフはロレンゾが書いておいたメッセージを読んで微笑ましい笑顔を浮かべた。小さいプレートに、牛乳とスープ、そしてスクランブルエッグを乗せて、2階にいる患者の所へ上がった。

「もう起きていたのか」

ベッドに腰をかけていたライはグスタフをみて、手を振り軽く挨拶をした。

「朝食を持ってきたぞ。俺が作ったわけじゃないけどな。昨夜のお客さんが来てね。夕飯のお礼に朝食を作ってくれたらしい。昨夜はお客が来た時間も遅かったからな、そのせいで起こされたりしてないか?」

ライは首を横に振った。睡眠を取りながら周りの気配を探るのは暗殺者にとっては日常生活みたいなものだった。

「そのお客さんが君の事を診てくれる‘青いマントの医者’だ。君は運がいい。そのお客さんはロハン大陸あちこちを回っているから滅多に会えないんだ。昨夜、君にかけられている呪いに関してはもう言っておいたから。もう少しで帰って来ると思うから、そうしたら治療を始めよう。さあ、召し上がれ。俺は戻って治療の準備をしておく」


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