第六章 嵐の前夜

第11話 1/2/3/4/5/6

彼女は再びキッシュに体をぶつけてきた。彼女の攻撃を避けながら短剣を振るった。今回もキッシュの代わりに後ろにあった木が彼女の攻撃を受け、燃えていた木は灰になって崩れた。

火の手はどんどん勢いを増し、息をすることも苦しかった。激しい熱気に肺まで枯れたように息苦しい。逃げる場所はない。

目の前に現れたものが何であれ、殺さないと自分が殺されるはずだ。モンスターになった彼女は飽きずにキッシュを攻撃し続ける。火の手を避けながら短剣を振りまわした。

しかしモンスターは傷一つ受けず、次から次へと攻撃をしてくる。どんどん迫ってくる死への恐怖を抑えるためにより強く短剣を握りしめた。
これ以上長く戦い続けるのは無理だと判断したキッシュは、全てを賭けた攻撃を強行した。

胸の穴から途切れなく流れていた血で、彼女の全身を赤く染めていた。陰惨な悲鳴を出しながら血の塊とも見えるモンスターが攻撃をしてくるのと同時に、キッシュも飛び掛った。

モンスターの攻撃を避けながら、首に剣を刺した。しかしモンスターは何の痛みも感じていないかのように、肘を曲げキッシュの背中を切り裂いた。

強い痛みを感じキッシュは倒れてしまい、背中から出た血が地面を染あげた。モンスターはゆっくりとキッシュに近づいてきた。

‘首に剣をさしたのに、傷すらない!どういうことだ!死んだ人を真似したモンスター?違う、俺の事とあの時を知っていた。まさかナルシの遺体が邪気で支配されモンスターになったのか?いや、そんなはずがない。ナルシの遺体は誰の手も届かない深い海の底に封印した。一体これはなんだ?’


・次の節に進む
・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る