第六章 嵐の前夜

第13話 1/2/3/4/5

フロイオンはロレンゾの指示通り右手ではワンドを、左手ではワンドを握った右手を掴んだ。

「呪いを解くって事は死に向かっていた魔法を生命に向かわせることです。簡単にではありません」

ロレンゾが治癒の魔法を唱え始めると、それと同時にフロイオンも呪文を唱えた。ワンドを握った2人の手から流れた青い光と赤い光が螺旋になってワンドを巻きあい、まるで稲妻が大地に射されるような勢いでライへ落ちた。

目をつぶっていたライの顔に苦しみが浮かんだ。ロレンゾとフロイオンの手から流れ出していた2色の光は、ライの体に吸収されるように溢れ出してきた。2人は汗をダラダラ流し、ライは息苦しさのあまり真っ青になった。

ライの体へ吸い込まれた2つの光は金色になって首へ集まった。光が集まると首から黒い水のような、まるで夜の海のような黒い波が現れ、治癒の光と激しくぶつかり合った。ガラシオンの目は好奇心と驚きで大きくなっていた。グスタフはガラシオンの肩に手をして静かに説明した。

「患者の首から出ている黒い煙が呪いの力だ。その力と破るために治癒の光が戦っているんだ。呪いが強力なものであればあるほど、治癒の光を作る治療師の魔力が多く使われる。よく見といてごらん。ガラシオン、お前の父親は自分がどれほどつらくても絶対患者を捨てたりはしない」

どんどん激しく大きな塊になった治癒の光と黒い煙はやがて子供の頭ぐらいの大きさになって、速いスピードで回転しながら白い煙に変わり始めた。ライの首から流れだした黒い煙が全部消えた後、ロレンゾとフロイオンは唱えた魔法を終えた。

真っ白になったライの顔の血色がよくなった。ロレンゾは気をつけながらゆっくりとライの肩を振った。ライが目を開き、やっとロレンゾは安堵した。

「成功したか?」

グスタフとガラシオンがベッドに近づきながら聞いた。彼女の体にあった呪いは完全に解かれたと、ロレンゾが答えた。

「なら、声が出るのか?どうだ?名前を教えてくれないか?」

グスタフの質問にライはもじもじしながら答えた。

「ラ…ライです」

「本当に呪いが解けた!ロレンゾ、フロイオン、よくやったぞ。ご苦労!」

「私にはまだ用が残っています」

フロイオンは疲れて声でライに聞いた。

「教えてください。私の暗殺を依頼したのは一体誰ですか…?」

ライは上半身を立てながら、フロイオンの顔をじっくり見ながらゆっくりと答えた。

「ジャドール…ジャドール・ラフドモン」


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