第七章 破られた時間
第13話 1/2/3 ライがフロイオンに暗殺依頼をしてきたのはジャドール・ラフドモンだったと明かしてから、フロイオンは自分が泊まっている宿の部屋から出られなくなった。 いくつもの夜が明けたが、フロイオンは部屋から動こうとはしなかった。ライはフロイオンが衝撃を受けた理由は分からなかったけれど、ジャドール・ラフドモンが依頼人だったという事実が予想より重要だったということだけは分かった。 フロイオンが部屋に閉じこもって姿を見せないうちに、ライはロレンゾとグスタフから更に治療を受けた。呪いは解けたが、後遺症が残らないように魔法治療と薬草治療を受けなければならないというのがロレンゾの説明だった。 朝起きてロレンゾから魔法治療を受けて、グスタフがくれる薬草ジュースを飲むと、ライは森の中に入って静かな場所で瞑想をした。パルタルカにある訓練所で全ての訓練が終わって研修暗殺者になると、初めて実戦の機会を与えられた。 暗殺の訓練を受けるのと、実際に一人の人間を殺すのはまったく違うものだった。研修暗殺者たちは長い間、訓練所で人を殺すことに対して罪の意識を感じないように教育を受けてきたが、初めての実戦を経験したほとんどの研修暗殺者たちは精神的な衝撃に苦しんだ。 そのため、各門派では研修暗殺者たちに瞑想をやるように指導した。ライも研修暗殺者になり、トシジョ門派に入って師匠のジン・トシジョから一番始めに教えてもらったのが瞑想だった。瞑想でいらない邪念を消して、心を冬の湖のように冷たくて静かにするのが毎朝、門派でやることだった。 ライは朝、治療が終わると日が暮れるまで深い森の中で瞑想を続けた。5日目の朝の治療が終わって、人通りの少ない所を探して、広い岩の上に座って深い瞑想についていたライは自分を見つめている視線を感じてゆっくり目を開いた。 瞑想にふけている自分を見つめていた人をロレンゾが連れてきた、ガルラシオンという少年だった。ライとガルラシオンは何も言わずにお互いを見つめた。探索でも、警戒でもない、まるで風景を見つめているような眼差しで自分のことを見ているガルラシオンに、ライは不思議と安らぎを感じた。 「おはよう」 先に口を開いたのはライだった。ライの挨拶にガルラシオンも静かな声で挨拶をした。 「おはようございます」 しばらく沈黙があってから、ライがガルラシオンに隣に座るかを聞いた。ガルラシオンはうなずいてゆっくり歩いて、ライが座っている広い岩の上に登ってきた。ライのすぐそばに座って何も言わずに風景を眺めていたガルラシオンが告白するように言った。 「あなたは私の母に似ています」 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |