第七章 破られた時間
第15話 1/2/3 「軍長、本当に大丈夫ですか?」 セルフが心配そうな顔でゾナトスに聞いた。ゾナトはローブを上げ、中に着ている‘ゼロス’をみせながら答えた。 「エレナさんが作ってくれた魔法を弱化させる鎧まで着ているから、大丈夫。もし、何かあっても犯人を捕まえることができればそれで十分だ。」 「僕はカエールの予想が外れるのではないか心配です」 「いや、僕は彼の言う通りだと思う。犯人はハーフエルフの中に入り込んでいるはずだ。いろいろ考えてみたんだけど、カエールの推理が正しいと確信したんだ。」 ドアが開きアリエが入ってきた。 「準備が終わりました。軍長、大きな木の下でみんな待っています」 「何人ぐらい集まっている?」 「ほぼ全員のようです」 セルフが驚いたように聞いた。 「ほぼ全員?カイノンのハーフエルフがほとんど集まったってことか?」 「ええ、正直言って人が多くて犯人が行動する前に捕まえられるかどうか、ちょっと心配だわ」 セルフが不安を隠せず、ゾナトの方を向いた。 「僕はお前らを信じている。心配ないさ、出来るぞ」 ゾナトはセルフの肩をたたきながら、ドアに向かって歩き出した。 「さあ、あまりお客さんを待たせるのも悪いから、そろそろ出ようか?」 アリエがドアを開けてくれた。ゾナトは外に出て、カイノンの東の入口へ歩いた。 セルフは軍長の後ろをついて歩きながらカイノンを見回った。 アリエの話通り、ほとんどのハーフエルフが軍長の結婚式場に行っているのか、 いつも賑わっていたカイノンは静かで人影もなかった。 ゾナトが東の入口から出ると、エレナがたくさんの荷物を乗せたロバと道端で待っているのが目に入った。 「何かありましたか?」 ゾナトが驚いてエレナに聞いた。 「申し訳ございません。軍長の結婚式で一緒にお祝いしたかったですが、急用ができてしまってリマに戻ります」 「こんなにいきなり出発するとは思わなかったのでちょっと慌ててしまいました。用事が終わりましたらもう一回戻ってくださいませんか?」 エレナは笑顔で答えた。 「いつになるか分かりませんが、今のように歓迎してくださるなら後で来ます」 「もちろんいつでも歓迎です。」 「ありがとうございます。結婚、おめでとうございます。…ではまた」 エレナは挨拶をしてロバと一緒に立ち去った。エレナの姿が見えなくなるまで見送ったゾナは急いで式場へ移動した。 ・次の節に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |