第七章 破られた時間
第2話 1/2/3/4 アインホルンからシュタウフェン伯爵の城までは、山や森の人里から離れた道に沿って移動をすることとなった。こんな道を通るのは、今は処罰を受ける事になったが、かつて国王の忠臣であったシュタウフェン伯爵の名誉を考えると、できる限り人に知られないようにとの、国王の命令があったからだとジフリットが説明した。 しかし、エドウィンはシュタウフェン伯爵の名誉よりも、貴族が処罰を受けるという事実を一般の民に知らせたくなかったのではないかと思い始めた。モンスターが増えるようになってから城の外にいた村人たちは、生活が難しくなり、仕事を求めて城に行き、貴族の下人や小作農になった。 そういった選択すら出来なかった貧しい人たちは結局、山賊や海賊になった。山賊や海賊たちは、貧しい民よりは比較的に裕福な貴族たちの財産を狙い、旅行中の馬車を襲撃したり、一部では貴族たちの城を侵略することもあった。 貧富の格差が激しくなればなるほど、貴族と民の距離はどんどん離れることになって、貴族に対する民の尊敬は段々憎しみへと変わっていった。 こんな時期に、国王の処罰を受ける事になった貴族の話が民たちの間で話題になり、これはまた他の貴族たちには恥と思われた。エドウィンは遠く先に進んでいるグレイアムベルゼン伯爵を見ながら同じ伯爵の地位にいる貴族を、国王の命令で処罰しなければならない彼を少し哀れに思った。 ジフリットによると、グレイアムベルゼン伯爵は自分より1つ年上だという。しかし、エドウィンにはグレイアムがジフリットのように大人にみえた。 「それは多分、グレイアムがたった10歳の時に父上の爵位を受け継いだからだろう。彼の父上であるベルゼン伯爵は病気で若いうち亡くなったから。前代のベルゼン伯爵は兄弟が居なかったから、当時10歳だったグレイアムが父の爵位を受け継ぐ事になったのさ。 一族の最高の座に上がった瞬間、グレイアムの幼年は終わったわけだ。つまらない人だが、貴族たちの中で彼を婿にしようとする貴婦人たちがどれほど多いか、君にはまだ分からないだろう」 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |