第七章 破られた時間
第9話 1/2/3 集まっていた人々は聞き間違いだと思った。大長老イゴールはその言葉の意味を問いただした。 「自然が破壊されて行くとは…いったいどんな意味でしょうか?」 「前回の会議で、アピル族が我々に背を向けたことについて聞いていらっしゃると思います。それと関係があるかどうかは分かりませんが、一部の野生動物がモンスター化しています。一番代表的な動物が熊です。 皆さんもご存知の通り、熊は本来ならこちらから先に攻撃しない限り人を襲わない動物でした。しかし、最近森の中でいきなり熊に襲われたという人が増えています。 今は一部の野生動物に限る話ですが、野生動物全体がモンスター化するかもしれません。まるで、仲良く共存してきたアピル族とピクシー族が変異した事のように…」 バルコンの話が終わっても誰も何も言わなかった。会議室には沈黙だけが流れていた。しばらくして、ようやく大長老が口を開いた。 「若いハーフリングに召喚技術を習わせることについては、長老たちの綿密な会議で決めることにします。その他の意見はございませんか?」 「神官たちに特別な儀式を頼むことはいかがでしょうか?」 ベロベロの後継として新しく眉毛ミミズク長老になったニカウが慎重に声を出した。ニカウの意見に松コケの長老が首を振りながら重苦しい声で言い出した。 「儀式をしても答えが得られなくなって、もう50年以上経ちました。特別な儀式をしたとしてもシルバ様の声が聞けるとは思えません。我々には計り知れないお考えがあって、沈黙していらっしゃるのだと思います。我々としては待つしかありません」 「あの…」 その場の全員が声の主の方に振り向いた。茶髪の若い情報収集家が恥ずかしがりながら手を上げていた。 「どうぞ」 大長老の声に、若きの情報収集家は席から立ちあがり、震える声でしゃべり始めた。 「私は今回始めて情報収集に行ってきたモクモクと申します。エルス港へ向かっている途中、偶然とラウケ神団の人々と出会いました」 ラウケ神団という言葉にタスカーは自分も知らないうちに耳をすませていた。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |