第七章 破られた時間
第3話 1/2/3 ナルシ… 切なく彼女の名前を叫んでは、また叫び続けた。自分の名前を呼んでいる声が聞こえたのか、ゆっくりと彼女は目を開いた。しかし、生きていると安心する前に、彼女の赤い瞳に邪悪な気が宿っている事に気がついた。 すさまじい怪力で彼女は自分を抱いている人を押し退けた。体を起こして彼女を見ると、苦痛にゆがんだ顔で叫んでいた。 『悪魔が私の中に入ってきている!』 恐怖に満ちた叫び声を出しながら彼女の体が震えた。助けを求める声が二つに分かれて叫びをあげた。 『助けて!』 『この子の肉体は私のものだ!』 邪悪な気に侵食されていく彼女を助けたいけれど、どうすればいいかが分からなくて涙が止まらなかった。いや。実は知っていた。選択肢は1つだけで、彼女を助けるのは不可能である事を。 彼女の肌がどんどん黒くなり、邪悪な気は勢いを増していたが、彼女はずっと助けてと叫んでいた。悪魔になっていく彼女を見ながら心臓が張り裂けるような苦痛を感じた。仕方なかった。 いっそのこと、悪魔になる前にそれを止めてやるのが、彼女のためにしてやれる唯一のことだった。剣を出し、目をつぶって呪文を唱えた。そして、彼女に向かって走っていった。刃が深く刺さるのを手先で感じる事が出来た。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |