第七章 破られた時間
第9話 1/2/3 「ラウケ神団についてはご存知ですよね。ヘルラックという予言者の著書に基づき、集まり始まった新興宗教集団で、彼らの聖書と呼ばれる予言書によると、ロハン大陸に訪れている最近の危機は神様の意思で、 この世を滅亡から救う為には、神様の許しを請う必要があるそうです。ラウケ神団の人々が一日の半分以上、祈りを捧げているのはそれが理由だということはほとんどの方がご存知だと思います。」 バーブムがラウケ神団について、当たり前のことのように話すと、モクモクは首を横に振った。 「しかし、この前会った集団は違いました。ロハン大陸の滅亡を防ぐ為に神様に許しを求めるのは知っての通りでしたが…彼らは祈りを捧げるのではなく、罪を犯した人々を処罰して大陸を浄化させるべきだと信じていました」 「罪を犯したら処罰を受けることは当たり前ではないでしょうか?」 松コケ長老が理解できないといった表情で聞いた。 「彼らは…全ての犯罪者を殺しました。ちっぽけな嘘をついた人まで殺していました!」 「何と!」 一気に会場が騒がしくなった。大長老が人々を静かにさせ、そのまま立っていたモクモクを座らせた。それから落ち着いた口調で話し始めた。 「この世に混沌が続いていくと、正しい判断するのが難しくなります。その分、間違っていることを信じてしまう人が増えると思います。私が見る限りでは、モクモクさんが目撃した集団はラウケ神団とは違う、悪性の宗教集団だと思います。 今まで私たちが集めてきたラウケ神団の情報を考えると、神様がロハン大陸を滅ぼそうとしているという彼らの主張はあまりにも危険なものですが、悪質なことをした情報はありませんでした。 モクモクさんが目撃した人々は途中で判断力を失い、間違った方向へいってしまった人々の集まりでしょう。結論はより多くの情報を集めてから判断しても遅くはならないでしょう」 タスカーの目は長老たちが話している様子を見ているように彼らの動きを追っているが、頭の中は完全に会議場から離れていた。エミルがラウケ神団の人になったことについては聞いたが、それ以上は何も知らなかったことに気がついた。 犯罪者を殺して大陸を浄化させる集団と、命を賭けて神の許しを求める集団、そのどちらだったのかさえ、わからない。自分は息子について何も知らなかったのだ。エミルが2歳になった頃、タスカーは正式に情報収集家になった。その時からエミルとはあまりしゃべる時間がなかった。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |