第七章 破られた時間

第12話 1/2/3

胸はざわめいて強く握った掌には汗がたまっていた。半分ぐらい開いている窓から入ってきた冷たい風がトリアンの鼻の先をなでた。風に隠れていた甘い花の香りが緊張した体を和らげた。胸のざわめきが落ち着くと、トリアンは体を起こしてベッドに腰をかけた。

‘一体なんだろう?どこで起きたんだろう?’

頭が混乱した。夢と言うにはあまりにもたくさんのものを感じた。しかも初めて見る場面なのにどこか見たことのあるような気がした。

‘もし私が見たのが未来ならば…’

トリアンは首を左右に振った、考えるだけで胸がしびれてきた。もう一度眠ってしまったらまた同じ夢を見る気がして眠れなかった。ぼうっと窓の向こうの丸い月を見つめた。流れる雲と踊っている白い月は永遠のようだった。トリアンは気配を感じて振り向いたらオルネラがドアを少し開けて自分を見つめていた。

「お入りなさい。」

トリアンが手招きするとオルネラはすっと走ってきてトリアンに抱きついた。トリアンは自分のベッドの上にオルネラを横にさせて布団をかけてあげた。

「なんで起きたの?」

オルネラはトリアンを見つめながら囁いた。

「トリアンが泣いていたから」

トリアンは微笑みながらオルネラの額に口付けした。

「私もたまには怖い夢を見るときがあるから。今夜はオルネラが私のそばにいてくれる?」

オルネラは少しうれしそうな顔で首を縦に振ってトリアンの懐に入り込んだ。トリアンはオルネラを抱きしめてあげた。もう一度、夜風が花の香りと共に窓から入ってきたとき、オルネラはぐっすりねむってしまった。トリアンはオルネラの顔を見つめながらつぶやいた。

「もう私がいなくてもあなたの心では光がどんどん育つでしょう」


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