第七章 破られた時間

第14話 1/2/3

ドアが開き、バルタソン男爵とジフリットが入ってきた。
体を起こして答えようとしたが、背中からの痛みで横になってしまった。父は心配そうな顔で息子を見つめた。

「大丈夫です。すぐ治ると思います」

エドウィンは背中の痛みを我慢しながら、平気な顔を作って答えた。ジフリットはベッドに近づき、エドウィンの額から汗を拭きながら話した。

「母上がエドウィンの怪我について知ったら驚きますので、できれば怪我が治るまで帰らない方がいいと思います。」

「そうだね。心配するだろうな。しかし、静養にいい場所があるのか探してみないと」

ノックの音がし、グレイアム・ベルゼン伯爵が入ってきた。

「バルタソン君の意識が戻ったとの連絡をいただきました。バルタソン君、体の調子はどうですか?」

「おかげさまで、大丈夫です。ご心配をかけまして、すみませんでした」

「何を言っていますか。バルタソン君の活躍で今回の戦闘が計画通り早く終わりました。お礼を言うのはこちらです。」

「いいえ。やるべきことをやっただけです。それより、ここはどうなりますか?」

「国王陛下の命により、シュタウフェン伯爵とその息子、一族は全員処刑となりますが…」 

言葉濁してしまうグレイアム伯爵にジフリットが聞いた。

「何か問題でもありますか?」

「はい… 実はシュタウフェン伯爵の息子の姿が見つかりません」

「城内にいなかったんですか?」

「今まで兵士たちに城内の隅々まで探させましたが、何も見つかりませんでした。
ワーウルフを閉じ込めておいたと思われる地下監獄を見つけましたが、空っぽでした」

「時間を稼ぐつもりでしたね」

「はい。シュタウフェン伯爵が徹底的に防御に集中したのは、息子を遠い所まで逃がす時間を確保するつもりだったと思います。伯爵は息子を城から逃したのも相当前でしょう」

「ということは…」

グレイアム伯爵は頷きながら、沈痛な口調で話した。

「シュタウフェン伯爵の罪はもっと重くなり、死刑は免れられないでしょう。」


・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る