第七章 破られた時間
第15話 1/2/3 予想が外れてバナビーが殺害されたら、自分は耐えられないだろう。昔、ハーフエルフ達の街を探して大陸を探検していた時からバナビーはゾナトの妻だった。 しかし、ゾナトがハーフエルフの代表になってから、バナビーは軍長の妻という立場のせいで、いろいろな拉致や暗殺の脅威にさらされるようになった。 ゾナトは彼女の為に離婚を決心した。大体のハーフエルフがゾナトを非難したが、彼女だけは彼の心を分かってくれて、彼の為に離婚に同意した。その後、何人かのハーフエルフからプロポーズを受けたが、彼女は全て断り続け、 ゾナトの友達として、政策への助言者としてそばにいてくれた。 ゾナトが今回の計画について彼女に相談した時も、偽造婚式の新婦の役をやることを彼女から言い出した。ゾナトも最初は反対したが、計画は可能な限り少ない人でないとダメだと彼女に口説かされた。 ゾナトは台の上にあがり、バナビーの頬に軽くキスした。 ハーフエルフたちは歓声をあげながら、喜んでくれた。 「ゾナトとバナビー、二人の幸せの為に!乾杯!」 誰かの大声に、ハーフエルフ達は手にしていたコップを高く上げながら乾杯を叫んだ。 誰かが‘ベール飛ばし’の時間だと大きく叫んだら、歓声の声は一層大きくなった。 木の上に身を隠していたカエールの手には緊張が高まった。 新婦が殺害されたのは‘ベール飛ばし’をする時だったのだ。 今回も‘ベール飛ばし’の時に犯人が動く可能性が高いだろう。 まだ怪しい動きは見当たらない。 犯人の逮捕も重要だけど、予想より多くの人が結婚式に集まっている為 周りの人を傷つけずにできるか心配になった。 落ち着くように自分自身に声をかけながら、息を整えた。 バナビーが台から降りた。 台の上に立っているゾナトの目はバナビーの動きを追いかけていた。 バナビーが止まって、ベールを手にした。 ベールを握った手を高くあげ、ベールを飛ばすのに十分な風が吹いてくるのを待ち始めた。 まだベールを飛ばすには、風が弱い。みんなの視線はバナビーのベールに集まっている。 みんな息まで抑えて静かにベールが飛ぶ時を待っていた。 風がどんどん強くなり、ベールが風にひらひら揺れ始めた。 バナビーは自分が待っていた風が吹いてくると、ベールを握っていた手を開いた。 ベールがバナビーの手先から離れ風に乗る瞬間、 誰かこっそり袖の中からワンドを引き出すのがカエールの目に入った。 全ては一瞬の出来事だった。 「グウッ」 「キャー!」 カエールの石弓から離れた矢は、風を切る鋭い音を出しながら ハーフエルフの中に隠れていたエルフの右肩に突き刺さった。 エルフの苦しいうめき声に驚いた人々が悲鳴を上げた。 カエールは素早く木から降りて倒れているエルフに近づき、顔に弓で狙いを定めた。 少しでも怪しい動きを見せたら、ただちに射抜くつもりだった。 周りを確認すると倒れたエルフが3人いた。 そして、台の上にはゾナトが倒れていた。 ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |