第七章 破られた時間

第8話 1/2/3/4

「フロックスさんはどんな種族なの?」

ディンから頼まれた焚き火用の木を集めている時、リオナからそう質問された。リオナからもらったパンを食べていたフロックスは質問の意図を尋ねるかのようにリオナの方に振り向いた。

「フロックスは見た目はハーフリングだけど、中身はそうではないような気がする。違うんでしょう?」

「なら何に見える?」

リオナは瞬きしながら、静かに答えた。

「実は…フロックスはどの種族とも言えないよ。たまに…この大陸の人ではないんじゃないかと思っちゃう。」

フロックスは一瞬びっくりしたが、表情には出さずに大きな声で笑いながら言った。

「わはははは、俺が幽霊ってこと?」

「ちがう!そうじゃなくって…」

慌てた表情でリオナが手を振った。フロックスは地面に横になって空を見上げながらパンを食べた。

「私はたまに自分がハーフリングという仮面をかぶって、真似事をしてるんじゃないかと思うの」

フロックスは目を大きく開いてリオナを見つめた。

「なんと言えばいいだろう。フロックスもお爺さんから聞いたから知ってると思うけど、実は私ヒューマンでしょう。幼い頃からハーフリングと一緒に育ってきたけど、これからも彼らとずっと仲良くしたくて、ハーフリングのフリをしている自分に気がつくの。

何があっても私がハーフリングになれるわけがないのに…時間が流れると、だんだん私は友達とは違うってことが分かる。ただ、よそ者を見る目で見られるのが怖くて、自分の思いとは違うようにしゃべったり、行動したりするのよ。

ハーフリングなら今何と言うだろう、今どう動くだろうって…それを考えながらハーフリングたちと付き合っている私は…」


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