第七章 破られた時間
第9話 1/2/3 エミルの面倒を見るのは画家だった夫に任せた。家族の面倒を見るのが好きなやさしい夫を信じていたので、エミルについて何の心配なく、思いっきり頑張って情報収集家として活動をしていた。 突然、夫が心臓麻痺でこの世を去ったのはエミルが13歳の時だった。でもエミルは一人で十分独立して生活できるようになっていたので、母の力を必要としなかった。タスカーは夫の急死への悲しい想いを乗り越える為に、より忙しくあっちこっち動き回った。 エミルとの時間もほとんどなくなった。ある日、エミルがラウケ神団の集会にいたことを聞いた瞬間、やっとエミルと時間をぜんぜん過ごしてない自分に気がついた。情報収集家としての活動を減らし、息子と時間を過ごすように頑張ってみたが、息子の心は既にラウケ神団に行っていた。 エミルはいきなりの母との交流に喜ばなかった。結局何ヶ月後かに、息子は手紙一枚を残してラウケ神団の人々と一緒に旅立ってしまった。その後、全力で探して追いかけていたが、やっと見つけた息子は既に冷たい遺体になっていたのだ。 タスカーは息子について何も知らなかったことを痛く感じた。彼が好きな食べ物は何だったのか、友達は何人いたのか、中で一番好きだったのは誰だったのか、大人になって召喚したい動物は何だったのかなどなど… エミルが夢中になったラウケ神団についても彼に聞いたわけではなかった。情報収集家として情報を得たのだ。ラウケ神団について調べて分かるようになると、少しはエミルについても分かるようになるのではないかと思い始めた。タスカーはエミルの為、ラウケ神団について調べることにした。 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |