第七章 破られた時間

第2話 1/2/3/4

「食事が準備できたそうです。先に召し上がってください。私はシュタウフェン伯爵に今夜尋ねるという手紙を送ってから行きます」

三人に了解を求めてから、ベルゼン伯爵は自分のキャンプが立てられている所へ歩いて行った。

「さあ、食事でもしながらもっと考えてみましょう。まだシュタウフェン伯爵がベルゼン伯爵の提案を受け入れたわけでもないですから」

ジフリットは食卓に向かいながら言った。エドウィンは頷いてジフリットと一緒に食卓へと歩いていった。

バルタソン男爵はゆっくり息子たちの後ろを追いながら言った。

「シュタウフェン伯爵はベルゼン伯爵の提案を受け入れるはずだ」

ジフリットとエドウィンはバルタソン男爵が食卓に来るまで待ってから一緒に席に着いた。いろんな種類のパンがぎっしり詰まったカゴと新鮮な香りがする果物が盛られているお皿、そしておいしそうな食べ物が食卓いっぱいに広がっていた。ジフリットは侍従がグラスに注いでくれたワインを一口飲んでから、バルタソン男爵に向かって聞いた。

「なぜシュタウフェン伯爵がベルゼン伯爵の提案をお受けになるとお思いですか?」

「私も個人的にシュタウフェン伯爵に会った事はないが、王城の公式的な行事で会った事がある。普段の彼の言動から考えてみると、騎士の名誉を落とすような行動はしない方だ。ベルゼン伯爵の言ったどおり、非武装でしかも一人で訪ねてきた客を攻撃する、そんな卑怯な行為とは無縁の方だ」

「しかし、ベルゼン伯爵の提案を受け入れるとは思いません」

エドウィンの言葉にバルタソン男爵とジフリットはエドウィンを見つめた。エドウィンはパンにバターを塗る動作を止めて自分の考えを言った。

「父上とベルゼン伯爵の言う通り、シュタウフェン伯爵が騎士の名誉を大事にする方であれば、貴族としての誇りも高い方であるはずです。そして、兄上の言う通り国王陛下への忠誠心を硬く持っている方であれば、自分の手で怪物になった息子を処刑したはずです。しかし、息子を生け捕りしアインホルンに送れという国王陛下の命令に逆らってまで息子を守ろうとしたことからすれば、きっとベルゼン伯爵の勧誘も断るはずです」

エドウィンの説明にジフリットは頷きながら言った。

「我が子に対する父の愛ほど強いものはない…って事だろう。難しい戦いになりそうだ。守るべきものがある人は簡単に倒れないから」


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