第七章 破られた時間
第7話 1/2/3/4 エレナはゾナト・ロータスをじっと見つめてからしばらく考え込んでいた。 「作ってくれますか?」 「作るのは難しくないんですが…‘ゼロス’は珍しい材料がたくさん必要ですから。材料さえそろえば1日で作れます」 「必要な材料は教えてもらえれば、コヘンが集めて来るはずです。知っているとは思いますけどコヘンは全大陸を相手に商売をしている貿易商人ですから」 「分かりました。急用なようなのでさっそく今から準備を始めましょう」 ゾナト・ロータスはエレナに礼を言ってエレナの発明室を出た。エレナはゾナト・ロータスが出てから書斎に入り、本を読み漁り始めた。魔法を弱化させる鎧‘ゼロス’はハーフリングたちにとっては秘密兵器みないな物だった。本当なら、いくらハーフエルフの軍長の要求だとしても‘ゼロス’を作ることは断るべきだった。 しかし、ハーフエルフたちの近くにいながら彼らがヒューマンとエルフたちにどれほど軽んじられてきたか分かるようになり、最近結婚式で死んでいったハーフエルフの新婦たちに対する彼らの怒りがよく分かったので、軍長の頼みを断るわけにはいかなかった。 そして、エレナもハーフエルフの新婦が殺されたことには怒りを感じていたので、軍長がどんな計画を立てているかは分からなくても、死んだ新婦の霊魂を慰めるのに少しでも役に立つのであれば喜んで手伝ってあげたかった。 「あった…‘ゼロス’の作り方」 エルナはほこりが溜まっている厚い本を手にすると、机の上に広げてから紙に必要な材料のレシピを書き写し始めた。20種類を超える材料の名前をすべて書き写した後、紙に書かれたレシピを読みながらエレナはコヘンが果たしてこの材料をいつ全部そろえ終えるのかと思い始めた。 子供の頃、おじいさんはエレナに誕生日プレゼントで‘ゼロス’を作ってあげると言った事があるけど、結局、‘ゼロス’を直接プレゼントされたのはその翌年の誕生日だった。‘ゼロス’の材料の珍しさがエレナを1年も待たせてしまったのだ。 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |