第七章 破られた時間
第8話 1/2/3/4 だんだん声が小さくなり、やがてリオナは涙を流した。いつも笑顔で楽しそうで、悩みなんかちっともないと思っていたかわいい少女の涙は、フロックスを奇妙な気分にさせた。 炎の塊を触ったり、燃える溶岩の中で横になったりしても一度も熱いと思ったことがなかったのに、胸が堪えられないくらい熱くなり、熱くなっていること自体に慌ててしまった。 胸の奥から感じられる熱い熱気は、それまで一度も感じたことのない熱さだった。熱い熱気はやがては炎になって、内から自分を燃やしてしまいそうだった。フロックスは慌てならが答えた。 「お…俺はどんな種族かは…大した問題ではないと、お…思う」 泣いていたリオナが涙に濡れた顔を上げ、フロックスを見た。リオナのその顔を見たら息が苦しくなった。 フロックスはまた目を閉じて必死で話し続けた。 「一番大事なのはどんな人かだよ。リオナが無理してハーフリングになろうと頑張らなくても…だからヒューマンの考え方で…リオナがやりたいことをしゃべり、思う通りに行動しても…皆、今と同じように接してくれると思う。 お前がヒューマンだろうがなんだろうがそれを気にしている人は誰もいない。お前がハーフリングの真似をしているからじゃなく、リオナだから好きなんだと思う。それは…」 一瞬迷ったようだったが、フロックスは小さい声で話した。 「俺も…お前がヒューマンだろうが、ハーフリングだろうが気にしない」 何で最後にそのことを言ったのか今も分からない。手にしているローブは、その後リオナが悩みを聞いてくれたお礼として作ってくれたものだ。何も言わずに出てきたのがいきなり気になった。突然自分が消えてリオナはびっくりしただろう。 もしかしてリオナが怒っているかもしれないと思うと、早く言い訳でもしないといけないと思って急いでローブをかけると洞窟から飛び出た。そのままプリアの街へ飛んでいこうとしていたフロックスの足を引っ張るものがあった。体全身で感じられる母の、エドネの気だった。 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |