第七章 破られた時間

第4話 1/2/3/4/5

しかし、絶えない暗殺者たちの脅威からアンジェリーナはフロイオンを守るために実家であるアルコン家に戻る事を決心した。誰にも気づかれないうちに、アンジェリーナとフロイオンはアルコン家へと逃げた。しばらくの間、フロイオンとアンジェリーナには安全な日が続くように思えた。

しかし、ある日、いきなり国王の命令と言い、王室親衛隊がアンジェリーナを連れていって、その後、二度と会う事はなかった。フロイオンはいまだに目の前で軍人達に連れられていく母親の姿を生々しく覚えている。

「フロイオン!あなたは必ず生き残るのよ!」

アンジェリーナの最後の一言はフロイオンの心の中に深く刻まれた。フロイオンは暗殺者たちから自分の身を守るために魔法の訓練をし続けた。そして、国王になったカノス・リオナンを刺激しないために身を潜め続けた。

カノス・リオナンに不満を持っていた何人かの貴族たちがやってきて、フロイオンを王にしたいと述べた事もあったが、フロイオンは丁寧に断ってきた。危険な欲は捨てるのは最善だと思ったからだった。代わりに自分の存在価値を示すために努力し続けた。

ロビナの勧誘で外交任務を引き受ける前に、フロイオンは司祭になるつもりだった。国王の権力とは距離がある司祭になると、兄はそれ以上、自分を殺す理由もなく、自分は神殿の保護を受け、兄の脅威からも安全になれるという判断からだった。しかし、今になって気付いたのは、自分がどんなにしてもカノス・リオナンは自分を殺そうとするという事実だった。

「避けられないのであれば、ぶつかってみないと」

フロイオンは自分の覚悟を決めようと自らに大きな声で言った。もはや引き下がる事は出来ない。生き残るためには戦って勝たなければならない。カノス・リオナンを倒してイグニスの国王になる事。それだけが自分の長い苦痛から逃れられる唯一の道だった。


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