第七章 破られた時間
第6話 1/2/3/4/5/6 「オーウェン…我が息子よ…結局こうなってしまったな」 伯爵は沈痛な口調でつぶやいた。自分を殺すかのように睨み付けてくるワーウルフを見つめてから、伯爵は振り向いて壁へと近づいた。壁を手でたどっていくと途切れたところに、大きな洞窟が現れた。 果てしない闇で満ちている洞窟はどこかに繋がっているようで、外の空気のにおいがした。伯爵はまた格子の前に戻ってきた。手にしていたヘルメットを被って片手には鞭を持って、空いたもう片方の手で鍵を持ち、監獄の扉を開けた。 扉がj開くと、ワーウルフは外へ飛び出て伯爵に襲いかかろうとした。伯爵は手に持っていた鞭を振り回した。恐ろしく振り回される鞭にびっくりしたのか、ワーウルフは少したじろいだ。伯爵は続け様に鞭を振り回してワーウルフを壁の裏に隠されていた洞窟へと追い詰めた。 ワーウルフは泣き叫びながら鋭い鞭打ちから避けようと後ろに逃げた。やがて洞窟の中へとワーウルフを追い詰めた伯爵は隣に掛けられていたトーチを掲げた。それと同時に途切れていた壁は轟音と共に一瞬で閉じてしまった。 ワーウルフは洞窟の中で、閉ざされた壁を叩きながら泣き叫んだ。伯爵は掌を壁につけて静かにむせび泣いた。 「オーウェン、早く逃げろ。誰にも捕まらない所に行くのだ。お父さんが少しでも時間を稼いでみるから早く逃げなさい」 しばらく壁を叩いていたワーウルフは結局諦めたのか、洞窟の中へと歩き出したようだった。シュタウフェン伯爵は涙を拭いて螺旋階段を上った。地上にたどり着いた彼の顔にはもはや涙はなかった。伯爵は外に出て、自分の命令を待ちながら待機している兵士達に言った。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |