第七章 破られた時間
第6話 1/2/3/4/5/6 「私、ギルトロイ・シュタウフェンは、息子であるオーウェン・シュタウフェンを生け捕りにし、アインホルンへと送れという国王陛下の命令に逆らい、ただいま息子を城外へと脱出させた。 いま城外には国王陛下の命令に従い、私を処罰するために軍隊が攻撃準備を整えている。私はこれから息子が少しでも遠くまで逃げられるように時間を稼ぐつもりだ。しかし、これはあくまでも私の過ちによるもの。私は君たちに犠牲を強要したくはない。だから朝が来る前にみんな城を離れろ。これが私からの最後の命令だ」 言葉を終えたシュタウフェン伯爵は振り向いて立ち去ろうとした。しかしその瞬間、大勢の声が飛び込んできた。 「その命令には従えません!」 「私たちもここに残ります!」 「伯爵のために戦います!」 伯爵は振り向きもせずに言った。 「私は君たちが無駄に命を落とすのは見たくない。早く立ち去るのだ!」 兵士の一人が大きい声で叫んだ。 「伯爵は飢え死にするところだった私たちを助けてくれました。その恩を返す事もまだできていません。人であれば死ぬ前に命の恩人に恩を返すのが当然ではないでしょうか?生死は全て運命です。ここを離れて浅ましく生き延びたくはありません。命をかけて戦って、伯爵に恩返しをさせてください!」 「ここに残ることを許してください!」 兵士達が一つになって叫ぶと、伯爵は黙ってその場から離れた。兵士達は夜明けと共に戦闘が始まるということを知っていたので、急いで防衛のための準備を整えた。 深い夜、闇の中でふいごは暑い熱気を噴出しなから、その火の強さを高め、槌で叩く音、鉄を締める音が城中に響き渡った。いつの間に夜空は西の山に隠れようとしていた。 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |