第八章 夢へと繋がる鍵
第1話 1/2 フロックスはそのまま硬直してしまった。体がつぶされてしまいそうな圧迫、それは確実に母神エドネの力であった。息することさえままならなかった。まるで大きな蛇が絡まって、徐々に圧迫してくるようだった。 ラコンから主神オンの力が消えた日、エドネの力も一緒に消えたのだ。何が起こったのか誰一人知らないまま、不安な日々が続いていた。そのある日、ロハがみんなを呼び出して、いきなり話し出した。 「先ほど、エドネの声が聞こえた。エドネも主神オンと一緒に消滅したそうだ」 ロハの話は想像を絶する衝撃的なものであった。誰もなぜ消滅してしまったのかを聞けなかった。不滅の存在だとずっと思っていた神の消滅は、あまりにも衝撃的で頭の中が真っ白になって疑問を浮かべることすら出来なかった。 いつも陽気でやんちゃだった風の女神シルバの顔も真っ青になって震えているだけだった。 「本当に…お母様が…エドネがそう言っていた?」 一番落ち着いたゲイルが先に口を開いた。ロハは頷いた。みんな喚き声だしてしまった。ロハはその反応を予想したように、落ち着くまでゆっくり待った。それから一人一人の顔を見ながら話し始めた。 「そうだ。確かにお母様のエドネの声だった。そして、エドネは我々に主神を復活するように命じた」 「復活?どうすればいいの?」 水の女神マレアが焦った声で聞いた。 「主神オンが消滅したのは、毎日のように増殖しているロハン大陸の生物のせいだ。 お父様が創造した大陸と、大陸に住んでいる生命が増えると、その分お父様の生命力が失われてきた。木に実がなり、その種がまた新しい木になる。動物が子供を産む… 新しい生命が誕生するたび、父の生命力が奪われてしまった」 「しかし、一つの生命が消えるとその生命力は父に戻るのではないですか?」 「その通り。ただ、新しく誕生する生命が死を迎える生命より遥かに多かったためだ」 「エドネに直接聞くよ。エドネは、お母様は今何処にいる?」 シルバがいまだに信じられない顔でピリピリしながら聞いた。 「俺も分からない。‘主神オンを復活させなさい’がお母様の最後の言葉だった。声が聞こえただけで、姿すら確認することが出来なかった。エドネの力も感じることが出来なかった」 その日以来、誰にもエドネの声が聞こえてくることはなかった。お互いに話したことはないが、エドネがどこか誰も知らない場所に身を隠していると思っていた。 まさか、エドネがロハン大陸にいるとは想像もしなかった。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の章に戻る ・目次へ戻る |