第八章 夢へと繋がる鍵

第7話 1/2/3/4

エミルの部屋は何も変わってない。
エミルは二度と自分の部屋に戻れないことを予感していたのか、部屋は綺麗に片付けられていた。
朝の日差しに満ちている部屋はあまりにも平和で何もなかったかのようだった。ベッドに近づくとエミルがぐっすり寝ているような気がする。
タスカーは自分の願いが叶わないことを知っていながらも、何かに導かれるようにエミルのベッドに近づいた。
もう死んだ息子のベッドが空っぽなのをみると、涙が溢れ出した。
息子のベッドに膝をついたタスカーは溢れ出す涙を止められず、枕をなでていた。
主人をなくした部屋には低い泣き声だけが満ちている。
泣きながら枕をなで続けていたタスカーの指先に何か硬いものが当たった。

タスカーは枕の下を見ると、小さい本が置かれているのに気がついた。震える手で本を開いてみると、見慣れた筆跡でそれは書かれていた。
エミルの日記帳だったのだ。
タスカーは丁寧に1ページずつ読み始めた。自分が知らなかったエミルがそこにはたくさん書かれていた。

好きになった女の子の話、友達と喧嘩した話、自分の夢、希望などタスカーに話したことがなかった、エミルの話が書いてあった。
エミルは自分が知っていたより、大人しくて繊細な人だった。
微笑みと涙が混ざり合う中、日記の途中で気になる文章を見つけた。

‘神は本当に存在するのか…’

タスカーは信じられない気持ちになって、繰り替えして読んでしまった。
何回を繰り返して読んでも意味は一つだけだった。
エミルは神の存在を疑っていた。神の存在自体に疑いを抱いている子が
どうして神への祈りで世界を救えると信じている宗教に熱中したのか理解できなかった。


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