第八章 夢へと繋がる鍵
第8話 1/2/3 アドハルマは楽しみながら説明しているが大長老カルバラの表情は冷たかった。 「アヴァドンが千の顔を持っているかどうか別に興味がない。俺が知りたいのはドビアンが勝利できるようにお前がアヴァドンを捕まえられるかどうかだ」 アドハルマが醜くなっている足を指差しながら言った。 「この足の代わりに得た実力です。キッシュがアヴァドンと出会う前にドビアンさんが勝利します」 「良かろう。試合は明日の朝、呪いの塔の前から始まるんだ。今回こそ絶対勝利するんだ」 「試合が開始したら、誰もいない場所で私に連絡するとき使う黒い水晶玉を埋めてください。誰も知らないうちにドビアンさんの手にアヴァドンが入っているはずです」 悪魔の魔法士は、身にまとっていた赤い布を振るった。 二人を保護しているように円になっていた赤い霧が布に吸い込まれていた。 赤い霧が全部消えた頃にはアドハルマも姿を消していた。 大長老はベッドの上で横になって、アルメネスの魂と初めて出会った時のことを思い出した。 あれは運命としか説明が出来ないだろう。 当時、アルメネスの体からデカン族が生まれた直後で、みんな迷っていた。 殺されたドラゴンの体から生まれたデカンの心は、怒りと悲しみで満ちていた。 アルメネスの激しい思いがデカン族に繋がったためだ。 カルバラも同じだった。カルバラはどうしようもない感情に巻き込まれあてもなく歩いていた。 熱が上がり、めまいを感じていた。 シャマル川の下流に着いた頃には体全身に力は入らず、一歩も動けない状態だった。 死は確実に近づいていたが、悲しみと怒りに満ちていた。 カルバラは川の流れに身をゆだねた。彼は海まで流れていき南方の海辺に着いた。 海辺の砂が感じられたが、カルバラは目を閉じたまま動かなかった。 そのとき、誰かの声が頭の中から響いてきた。 起きろ。ドラゴンの末裔よ… ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |