第八章 夢へと繋がる鍵
第9話 1/2/3 「カエール、父親を恨まないで。父親は私たちを捨てたのではない。 私が妊娠したといったら、ゼラードは結婚して一緒にデル・ラゴスに行こうと言い出した。 でもエルフと結婚した人々が周りからどんな視線を受けるのか知っていたから、私はゼラードから離れた。 彼が私たちをヴィア・マレアの隅々まで探しているのを知っていたが、彼を不幸にさせたくなかったので、戻らなかった。 カエール、父親は生まれる前からあなたを愛していた。 子供が生まれると自分のように弓の名手にするといいながら、自分の手で矢を作ってくれた。 もし父親と会いたくなったら、この矢を持っていけばすぐ分かると思う」 カエールの母は自分の死期を知っていたのかのように、その話をしてからすぐに亡くなった。 母親が死んだ後、カエールは傭兵になった。 母親の話通り、父の血が流れているからか、カエールのスキルは抜群だった。 傭兵になってから1年も経たないうちにピル傭兵団の団長になった。 たまに旅行するヒューマンの騎士と出会うと父親のことが思い出されたが、会いに行く気にはならなかった。 母親は彼を恨まないように言っていたが、カエールは父親の存在自体に憎しみを覚えていた。 理由は分からない。ただ、父親について考えると、なぜか怒りがこみ上げる。 自分を苦しませる父親の存在を忘れたかった。 母親が死んだ後、父親が作った矢も捨てようとした。 火に投げて燃やそうとしていた直前に母親の事を思い出して捨てられなかった。 今も地下倉庫のすみっこにある箱の中に保管されている。 その箱に入れた後、一度も箱を開けた事は無い。 アリエはベッドの上で物思いにふけるカエールに近づいた。 「何を考えているの?」 「何でもない。ただ、昔の事を…」 カエールはアリエの腰を腕で抱いた。アリエはカエールの胸に頭を当てながら言った。 「悲しい事だったようね…カエール。とても悲しい表情をしていた」 「母親のことを思い出した。子供の頃は母と二人きりだった。母親が亡くなって、いきなり一人になってしまった」 カエールはアリエの額に軽くキスしながら、優しい声で話した。 「今はお前がいるから、悲しくない」 アリエとカエールは手を握ってベッドで横になった。 手を通じて感じられるアリエのぬくもりを感じながら眠りに落ちた。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |