第八章 夢へと繋がる鍵
第14話 1/2/3 「ロハ、私を呼んだの?」 思い込んでいたロハの耳に清らかな声が聞こえてきた。 顔を上げてみると、シルバが目を光らせてロハを見つめていた。 「ロハの伝令は凄いね。 誰も知らないところで一人静かに身を隠していたのに、私を探し出した。 私達の一番えらい人が探していると伝えてくれた」 楽しそうに声をかけるシルバの話には少しも興味が湧かないように、ロハは無表情な顔で言い始めた。 「以前ゲイルにハーフリングの町を壊すように命令した。 しかしあの町に偶然フロックスが現われたから、ゲイルは手を出す事が出来なかった。 シルバ、お前がやって欲しい」 「簡単だよ。どうして欲しい?台風で綺麗に掃除してあげようか?」 ロハは顔を横に振った。 「いや。風を利用して狂気を広げて欲しい。ハーフリングがお互いを殺しあうように」 シルバは好奇心が湧いた顔で聞いた。 「何でわざわざそうするの?台風だったら一瞬で綺麗にできるのに?」 「フロックスへの罰だ。再び俺の命令に従わせる為だ。これで充分だろう?今すぐ始めろ。」 詳しく話すのも面倒くさいというように、シルバを残して一人でどこかに歩いて行った。 シルバは小さくなっていくロハの後ろ姿をずっと見ていた。 シルバは何も知らないような、何も興味がないような振りをしていたが、実際は全部見ていた。 ロハが何故このように命令したかも知っている。 ロハが破壊するように命令した町にはフロックスの心に入った少女が住んでいる。 ロハは彼女を殺すことでフロックスをいじめるつもりだ。 狂気によって自我を失った町の人々によって少女が殺されると、フロックスは怒り狂うだろう。 ロハン大陸に復讐したくなる動機付けとしては充分だ。 シルバは苦笑しながら、一人でつぶやいた。 「ロハ…あなたは私が創ったどんなモンスターよりも醜いと思うわ」 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |