第八章 夢へと繋がる鍵
第5話 1/2/3 「そうです。まだ確実なことは分かりませんが、ベルナス様がカイノンの近くで、 ハーフエルフ達と狩りをしている所を目撃した人がいるそうです」 「ハーフエルフと何をしていたのか?」 「そこまではまだ…」 ロザリオの声が大きくなったので、家庭教師も言葉を濁した。ロザリオは椅子から立ち上がり、自分の部屋に向かった。 「今すぐカイノンに行って確認してみる」 「ロザリオ様、それは不可能です」 ロザリオが足を止めて、家庭教師を振り向きながら聞いた。 「不可能?ベルナスがあそこにいるのを見た人がいると言ったじゃないか!」 「しかし、エルフが単独でカイノンに入ることは出来ません。ハーフエルフが警戒しています。カイノンに入る為には女王陛下の親書が必要なのはロザリオ様もご存知ではありませんか?」 「俺の息子があそこにいる!この1ヶ月間行方不明だった息子だ! ハーフエルフ達がエルフに恨みを抱いているのは十分分かっている。 エルフの自由な出入りが不可能なカイノンにベルナスがいるって事は拉致された可能性もあるって事だ!」 それでも、ベルナスの家庭教師は説得した。 「ベルナス様がエルフと知っていたら、ハーフエルフ達が一緒に狩りする事はないと思います。 たぶんハーフエルフ達は、ベルナス様が同族だと勘違いしていると思います。 それに、ロザリオ様はアルマナ荘園の領主です。 万が一、ヒューマンとエルフがハーフエルフを監視していると思われると大きな事件になります」 ロザリオは辛いうめき声を出しながら、壁にもたれた。 「早速ヴェーナに人を出して、女王陛下の親書をもらうようにします。もう少しお持ちください。親書が届くまでもっと情報を探してみます」 ロザリオの目から涙が流れた。 ロザリオは手で顔を隠して見えないようにしたが、声が震えていた。 「全ては俺の責任だ… もし…もし息子が無事に帰ってこられなかったら…自分を許せないだろう」 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |