第八章 夢へと繋がる鍵
第6話 1/2/3/4 大長老が‘エレナ’という名前に反応し、目を大きくした。 「エレナ?トナンス大長老の子孫である、エレナが帰ってきたのか?」 「はい、そうです。急用がありまして、夜中にもかかわらずお邪魔しました。申し訳ございません」 「いや。カイノンからこの夜中に帰ってきてまっすぐここにきたのは、きっと深刻な用件があるからだろう。 夜中でも起きるのは当たり前。早く中に入って」 エレナは軽く挨拶をし、大長老の寝室に入った。 大長老はベッド脇においてある小さいテーブルにコップを準備し、お湯を沸かし始めた。 「さあ、どうぞ」 「ありがとうございます」 エレナは大長老が指差した椅子に座った。お湯が沸いてくるのを待ちながら大長老はエレナを観察した。 「長い時間が経ったのに、昔のままのようだ」 「いいえ、そんなことはありません。私も年を取りました」 ペチカに載せておいたやかんから蒸気が出た。 エレナのコップにお湯を注ぎながら大長老が聞いた。 「お前をここまで急がせた理由はなんだろう」 「ベロベロ長老が亡くなりました」 大長老はあぜんとした表情で再度聞いた。 「みんな知っていることじゃないか?ベロベロ長老がリマから出発してから一ヶ月後、 ダークエルフの警備兵が彼の遺体を見つけたと、連絡が届いたじゃないか。 お前も既に知っていると思うが…」 「実は違います」 エレナが大きい声を出したので、お湯を注いでいた大長老の手は驚きで止まった。 「ダークエルフの警備兵は森の奥でモンスターにやられたベロベロ長老の遺体を見つけたといいましたが、事実ではありません。彼らはベロベロ長老がイグニスに着く前にモンスターの攻撃を受けたようだと報告しましたが、ベロベロ長老はモントの地下監獄に閉じ込められていたんです!」 「何?いったい何を言っているのか!」 エレナは胸の所に保管していた巻物を引き出して、大長老に渡した。 そして怒りを帯びた声で話を続けた。 「ベロベロ長老の遺言です」 ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の節に戻る ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |