第九章 運命の渦巻
第10話 1/2/3 エドウィンはシュタウヘン伯爵の死刑執行後から不眠症になってしまった。 白黒がはっきりできない自分の正義が惨めでつらかった。 グレアム伯爵が冷たく厳しくすることもわかる。 息子を保護する為、国王の命令に従えなかったシュタウヘン伯爵も理解できる。 どちらが間違っていると結論は出せないが、心の底から何かが間違っていると感じている。 父親が何も言わないこともエドウィンの心を乱している原因の一つになっていた。 あえてしっかりと叱られたら、少しは楽になったかも知れないのに父親はまるで何もなかったかのようにその件に関しては口を出さなかった。 ジフリトは苦しんでいるエドウィンを慰める為、励ましの言葉をかけてくれたが、心の曇りは消えなかった。 全ての悩みはエドウィン自ら結論を出すまで終わらない。 心の底から納得いく結論を出すまで終わらないだろう。 「空は青く、雲は白いということが当たり前のはずが… 今は雲が青くて、空が白いのではないかという疑問まで浮かんでしまう…」 エドウィンは窓辺に座って空を見上げながらつぶやいた。 当たり前だと思っていたことが、今は全部分からなくなってしまった。 疑問は疑問を生み続け、神は本当に我々を見守っているのかという根本にまでたどりついてしまった。 大陸所々で新しいモンスターが生まれ、数多くの人々がモンスターに命を奪われた。 治癒できない疫病がはやり、狂気にとらわれた人々が自分の家族を殺すということまで起きた。 「人を殺す神まで現れた…」 グラット要塞で起きたことがまるで昨日のことのように生々しい。 胸に大きい穴が開いたまま、剣を振るいまわっていたハウト。 狂気の赤い目を宿し、お互いを攻撃しあった兵士達… 殺気と憎悪を帯びた目で自分を睨みつけた神まで… キッシュは、彼は本物の神ではないと言った。ならモンスター? しかし、あの強く感じられる聖なる気運と壮大な力は、神でないと説明がつかない。 エドウィンはトリアンから聞いた話をふと思い出した。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |