第九章 運命の渦巻

第4話 1/2/3

「あなたの言うとおり、ジャイアントの戦士は足跡で人の姿を読むことができます。望むなら殺人現場に残っている足跡を読んで、犯人の姿について描写できると思います。
しかし慎重に考えた方がいいです。あなたの親友が犯人になる可能性もあります」

ナトゥーの話にセルフは迷う表情だったが、カエールは冷静に答えた。

「すでに覚悟しています」

殺人現場に到着したナトゥーはカエールとセルフが見ている中で足跡を調べ始めた。ナトゥーの姿を見ていたセルフがカエールにささやいた。

「どう考えても二人は死ぬべき罪を犯しているじゃ。お前もそう思うだろう?なのに、犯人を捜す必要があるのか?」

「犯人を捜す目的が犯人を処罰するためだけではない。犯人を捜すことはカイノンの秩序にも関係がある。カイノンにいるハーフエルフは執着心が強くない。俺も同じだ。

それに秩序まで乱れてしまうと、私たちはただの烏合の衆になってしまうんだ。軍長もきっと同じことを言ったと思う」

その時、ナトゥーがカエールに近づいてきた。

「いかがですか?何か分かりましたか?」

「犯人は大柄の人です。背はあなたより頭一個分は高いと思います」

ナトゥーはカエールを指しながら話をした。

「大柄だけど、太ってはいない。逆に体全体の筋肉を鍛えていて、動きには力が入っているはず。特徴的な所は両手を使える人ということです。
いつも両手を使っているのか、足跡に偏りがありませんでした」

カエールはわめき声を出しながら頭を抱えた。セルフはまだ誰も浮かばないのでカエールに聞いた。

「誰か分かりそう?」

「ヘベット…」

「ヘベット?確かにヘベットが彼が描いた人に似ているが…ヘベットが本当に犯人だと思ってる?」

「俺がやった」

低い声が聞こえてきて、2人は後ろを振り向いた。そこにはヘベットが落ち着いた様子で立っていた。

「俺がエルフたちを殺した。しかし、ぜんぜん後悔していない。やるべきことをやったと思うんだ」

セルフは何も言わず、ヘベットに近づき肩をたたいた。しかし、カエールは冷たい声で話し始めた。


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