第九章 運命の渦巻

第7話 1/2/3

「何かあったのか? ガラシオン?」

ガラシオンは先程からずっと何かに引っ張られているように感じ、後ろを振り向いていた。

「プリアの町からずっと、変な気配を感じます…」

ガラシオンの話を聞いたロレンゾは後ろを振り向いてみたが、何も感じられなかった。

「私はよく分からないな。多分、今回の逗留は長くなったから、離れるのが寂しく感じられて
そう思っているだけじゃないのかな」

ロレンゾはまたゆっくりと歩きはじめた。しかしガラシオンはまだ何か怖いものでも見ているような表情だった。
ロレンゾは優しく微笑みながらガラシオンの肩をたたいた。

「風がだんだん強くなっている。近い旅館まではまだ残っている。急いで行こう」

ガラシオンもそれ以上は何もいわず、ロレンゾの手を握って歩きだした。
プリアの町から感じられる不吉な気配がなくなったわけではないが、父親の話通り、別れを惜しんでいるのだと思うようにした。
しかし、後に大人になったガラシオンは後悔した。
もし、自分がもっと意地を張ってプリアの町に戻っていたら、多くの命を救えたのではないかと後悔したのだ。
まだ何の罪も犯してない綺麗な魂を持っていたガラシオンには、シルバがプリアの町に流し込んでいた’狂気の気運’を感じていたのだ。
シルバはロハの命令に従い、プリアの町の住民に、周りの全てが恐怖に見える’狂気の気運’を流し込んだのである。
プリアの町の住民達は恐怖と感じる相手に向かい、悲鳴を上げながら攻撃しはじめたのだ。
フロイオンを生け捕りするために派遣されていたリマの兵士達まで巻き込まれ、街は一瞬で破滅の坩堝に落ちてしまった。

「これならロハも満足するだろう」


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