第九章 運命の渦巻
第8話 1/2/3 ナトゥーにエレナの手紙が届いたのは、カエールから頼まれてエルフ達を殺した犯人捜査をした翌日だった。 エレナの手紙には、ハーフリングの首都であるランベックに行く前にプリアの町によってみたが、ダークエルフは村を出た後だったと書かれていた。 また町人たちの話によると、彼はイグニスに向かったそうだ。 フロンがイグニスに戻ると、殺されるだろう。 ナトゥーがどれほど急いでも、フロンがイグニスに入ることを止める事はできないだろう。 これ以上、自分に出来ることはないと判断し、ドラットへ向かうことにした。 フロンまで手紙が伝わらなかった以上、カイノンに留まる理由がなくなったこともあるが、イグネスの謀略でドラットが密約に同意する恐れもあるからだ。 ‘ハーフリングたちもエレナからベロベロ長老が死んだことについて聞いただろう。 近いうちにハーフリングとダークエルフは戦争になる可能が高い。 ダークエルフと密約を結んだら、ダークエルフから参戦の要請があった場合、断ることが出来ない。 虎視眈々ドラットを狙っていたヒューマンは喜んで侵略してくるだろう。 何があってもそれだけは阻止しなくてはいけない’ 休まず走りつづけたナトゥーは三日目の朝日が昇る頃には、ドラットの国境までたどり着くことができた。 エトンに向かいながら、ナトゥーは誰に相談するべきかを悩み始めた。 最善はドラット国王であるレフ・トラバに報告するべきだが、ただの戦士にすぎない自分に国王への謁見が出来るはずがない。 ‘だったら、誰に知らせるべきだ。バタン卿? いや…何故か彼は信じられない…あったばかりの俺に自分は二番目の王子の支持者だといったけど、 真実かどうか確認できる方法がない…一体誰に…’ 思い悩んでいるナトゥーに聞きなれた声が聞こえてくれた。 「おい!退け!!」 後ろから聞こえてくる声は確かにクレムだった。 振り向いたナトゥーは、目の前までライノが近づいてきたことに気付き驚いた。 避ける間もなく、ナトゥーは真正面からぶつかり、飛ばされ地面に転がってしまった。 ライノはかなりの勢いで突進してきたようで、ナトゥーは体が痛くてすぐには立ち上がれそうになかった。 体を丸め、地面に転がりながらうめき声を出しているナトゥーに怒鳴り声が聞こえてきた。 ・次の節に進む ・次の話に進む ・次の章に進む ・前の話に戻る ・前の章に戻る ・目次へ戻る |