第九章 運命の渦巻

第11話 1/2/3

「ハーフエルフを?なぜだ?」

「ダークエルフの最終目標はロハン大陸を支配することだと思います。
今はハーフリングたちを狙っているが、その刃の先が我々に変わるのも遠い話ではないでしょう。
そのため、ハーフエルフとの連合が望ましいのです。」

ノイデはゆっくりと席に腰を下ろしながらうなずいた。

「一理はある。ダークエルフを避ける為だけでなくても、ハーフエルフと連合することはこれからを考えると役に立つだろう。
強欲なヒューマンがエルフたちとドラットを攻撃する可能性もないとは言えない。
ただしハーフエルフたちはハーフリングと用兵契約を結んでいるから、簡単には出来ないかも知れないな。」

「一つ情報があります。私はイグニスから脱出し、しばらくカイノンにいましたが、
そのときハーフエルフとエルフの間にトラブルが発生しました。
アルマナ荘園領主が行方不明になった息子を探しにカイノンにきましたが、途中、トラベルで殺害されました。多分近いうちにエルフとハーフエルフの間に戦争が起こると思います。
小心のエルフたちは戦争を避けようとすると思いますが、
同盟関係にあるヒューマンたちが静かにしているはずがありません。
恐らくエルフたちを説得し、連合軍を結成してカイノンを攻めると思います。
そうなるとエルフやヒューマンたちと交流しているハーフリング側では、ハーフエルフとの契約が邪魔になることでしょう。
その隙を狙いハーフエルフに援軍を約束すれば、喜んで受け入れると思います。」

「よい情報だ!神は我々の側に立っていらっしゃるだろう。
わしは今すぐ国王陛下に謁見するぞ。君はこれから重要な役目がある。
バタン卿は君を探していることだろう。どうか体に気をつけてくれ。」

「わかりました。」

ナトゥーは疲れた様子で椅子にもたれしばらく動かなかった。
ナトゥーは目を閉じたままクレムに声をかけた。

「クレム…」

「うん」

「家に帰ろう。母親が心配しているだろう。」

「今から?」

ナトゥーは腰を起こしながら頷いた。

「そうだ、今すぐ。夜だからマントをかぶると誰も気づかないだろう。」

「そうだけど…」

クレムは何か言おうとしていたが、黙ってドアに向かって動き出した。

「何だ?何か言おうとしたじゃないか。」

「いや、早く行こう。」


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