第九章 運命の渦巻

第1話 1/2/3

カルバラ大長老は頷いた。

「そうだ。これがアバドンの本当の姿だ。見た目で判断してはいけないことは十分知っているつもりだが、
アバドンの姿を見ていると実感するな」

「一人でも十分だったと思いますが…」

不満そうにいうドビアンをみながら、カルバラ大長老は無視する眼差しでしゃべった。

「そうですね。最初の試合であんなに恐怖に襲われるとは思いませんでしたので、
自分の力が必要かなと思いました。今回の試合でも負けたら、もう機会はありませんので…
そういえば、一体あの時何が見えたのでしょうか?」

ドビアンは一番目の試合で出会った恐怖が思い出されたのか、表情が硬くなった。

「何がそんなにあなたを怯えるようにしましたか?」

促すカルバラ大長老の言葉にドビアンが口を開いた。

「私が見たのは怒りに満ちているキッシュでした」

カルバラ大長老は変なことを聞いたかのようにしかめた。

‘怒る友達の姿をあんなに恐れるなんて。今回、前もって準備をしたほうが良かったな’

ドビアンは静かなに顔を横に振りながら、しゃべった。

「長老は理解できないと思います。キッシュの怒りを見たことがないですから。
彼が叫んでいる姿を見ないと理解できないと思います」


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