HOME > コミュニティ > 小説
第六章 嵐の前夜 第8話-2 09.05.07
 

ジフリットはエドウィンの両肩から手を離して、

周りを見回してから大きくため息をついた。

 

「君には負担になるかもしれないと思って言ってなかったが… 

君がグラット要塞から帰ってきて、

聖騎士団に報告したグラット要塞壊滅の件は、

想像を絶するほど危険なものだった。

聖騎士団もまたロハ教団の所属であるから、

君の報告は俺のいるアインホルン大神殿にもすぐに飛んできた。

聖騎士団と神殿では、

まず君に、君の見たすべてが幻覚であると強引に認めさせたけれど、

君は最後まですべてが真実だと主張したわけだ。

結局、聖騎士団はグラット要塞壊滅の件に関して

これ以上触れないことを命じて話を終えたわけだが… 

 

しかし、エドウィン…

最初、聖騎士団と大神殿の勧告を最後まで
拒否し続けた君に下された決定は破門だった」

 

エドウィンは信じられないという表情でジフリットを見つめた。

名誉を大切にする聖騎士にとって破門ほど屈辱的なことはなかったのだ。

 

「気持ちは分かる。

しかし、君の話は事実とは信じ難いほど衝撃的だった。

だから俺は君の破門を取り消してもらうために、

俺の司祭職をかけて、大司祭であるホライセン様を説得した。

幸い、普段俺の事を可愛がってくださった大司祭ホライセン様は

俺の熱心な話を聞いてくださって、聖騎士団と大神殿を説得し、

君の破門を取り消してくださった。

だから君は、他国との国境辺りの動向を調べる、
という任務を請ける事で
破門を免れる事ができたのさ。

世間にはグラット要塞壊滅の件が

モンスターによって部隊が襲撃され、聖騎士たちは壮烈に戦って戦死した

と知られているのは君も知っているだろう」

 

「大神殿と聖騎士団は、俺の話なんて信じないと言いながら、

どうして俺が目撃したことに対してそんなに気にしているんだ?」

 

「俺も詳しい話は教えてあげられないよ。

重要な事は、いまだに大神殿と聖騎士団が君を注視しているという事だ。

要するに君は要注意人物になっている。

ヘルラックの予言書にどんな内容が書いてあるかなんか気にするな。


俺の話を良く聞け、エドウィン。

君がこのまま大神殿と聖騎士団の気に障る事をやり続けると

俺にも君の事が守りきれなくなる」

 

ジフリットが司祭になった理由をよく知っていたエドウィンは、

それ以上、意地を貫く事が出来なかった。

ヘルラックの予言書に関する好奇心がなくなったわけではなかったが、

兄の熱心な話にエドウィンはヘラックの予言書の調査を諦めることにした。

 

「分かった。兄上のいう通り、それに関した疑問は収める事にする」

 

ジフリットはエドウィンの肩を軽く叩きながら頷いた。

 

「うん。よく決心してくれた。俺の言う事を聞いてくれて助かるよ」

 

ジフリットとエドウィンはまた馬車が待っている坂に向けて歩き始めた。

歩いていく間、二人は何も話さなかった。

遠くからかすかに馬車に吊り下げている灯りが見え始めた頃、

エドウィンが立ち止まってジフリットに声をかけた。

 

「兄上」

 

ジフリットも立ち止まってエドウィンを見つめた。

 

「兄上は俺がグラット要塞で見た事を信じてくれるのか?」

 

ジフリットはエドウィンの肩に両手を乗せて目を合わせながら強い口調で言った。

 

「俺は司祭である前に君の兄だ。

家族の話を信じないというのはもう家族ではないだろう。

誰がなんと言うようが、俺は君の話を信じる」

 

第6章9話-1もお楽しみに!
[NEXT]
第六章 嵐の前夜 第9話-1
[BACK]
第六章 嵐の前夜 第8話-1
 :統合前のニックネーム