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第七章 破られた時間 第14話 09.11.04

 

 

北に城壁が見え始めたのは翌朝だった。

南の方からは既に攻が始まったのか、投石器から飛ばされた石が

地面に落ちる重たい音がかすかに聞こえてきた。

エドウィンと兵士たちは北の城門に近づいた。

予想通り、北側を守備する者は誰もいなかった。

兵士たちは衝車を城壁に近づけた。

5名が衝車を固定し、りの5人とエドウィンは衝車に登って城壁をり越えた。

成功したと思った瞬間、遠くから飛んできた一本の矢が近くの壁に突き刺さった。

矢が飛んできた方向を確認すると、一人の兵士が敵の侵入を知らせながら、弓を構えていた。

次の矢はエドウィンの隣にいた兵士の体を貫通した。

エドウィンは盾で身をしながら、剣を握り締めて敵に向かって走りだした。

三番目の矢を放った敵兵がエドウィンの接近に驚いて迷っている隙を狙って

エドウィンは強くを振るった。敵兵は大量の血を噴出しながら倒れた。

しかし、エドウィンたちの侵入はもう知らされたようで、次と敵兵が向かってくるのが目に入ってきた。

 

エドウィンは自軍に休まず矢を射るように命令しながら、自分も動いた。

長年にかけて術を磨いてきたが、同時に多の敵兵を相手にする事は至難の技だ。

自軍が放った矢に何人かの敵兵が倒されていたが、長引くと不利になる。

エドウィンは、投石器から飛んでくる石に向かって飛び出した。

敵兵はエドウィンのいきなりの行動に慌ててしまい攻を止めたが、エドウィンを追いかけてきた。

何人かは投石器から飛んできた石につぶされ、

何人かは石を避けようとしている中で互いにぶつかり怪我をしてしまった。

エドウィンは城門の釣合い錘まで近づいた。

城門は太い金属の鎖で繋げてあって、ハンドルに硬く固定されていた。

 

エドウィンの意図が分かった敵兵の攻撃が激しくなった。

エドウィンはを地面に捨て、片手で盾を持って防御しながらハンドルを回そうとしたが、

片手ではできない重さだった。

できる道は一つしかない。

エドウィンは盾まで捨ててでハンドルを回した。

背中に矢が刺さったが、諦めずに回し続けた。

もう一本の矢がエドウィンの背中に刺された。

2回くらい回したら、少しずつ城門が開き始めた。

城門が動き始まると、飛んでくる石が減ってきた。

たぶん、中から城門が開かれるのを見て、石を飛ばすのを止めたのだろう。

エドウィンは残りの力を全て出して思いっきりハンドルを回した。

錘の重さで城門が勝手に開き始めた。

大きな歓声が近づくのを感じながら、エドウィンはを失った。

 

全てはぼんやりとかすかにしか見えなかった。

周りは光にちていた。

永遠で不滅な、聖なる光のようで、暖かくて厳粛に感じられた。

エドウィンは、夢の中で夢を見る自分を見ているような気がした。

何人かの後ろ姿が見えた。

性別も種族もそれぞれで、エルフもダークエルフも、デカン族までいた。

みんな前のほうの光に向かって立っていた。

疲れきっているようだったが、お互いに信しているのがエドウィンには感じられた。

 

ありがとう…

 

後ろ姿の誰かがを出した。エドウィンからでは彼らの表情が見えなかったが、

やかに笑っているのが分かった。

 

「…我の創造神、ロハよ。貴方の手で息子を保護してください…」


耳の近くからかすかな祈りの
が聞こえてきながら、エドウィンは夢からめた。

一番先に目に入ったのは、春の若葉を思い出させる色のカテンだった。

 

「エドウィン!意識が戻ったのか?」

 

首をにすると自分を見つめているジフリットの顔が見えた。

ジフリットはベッドに近づき、エドウィンの手をつかんだ。

 

「…ここは…?攻城はどうなった?」

 

「君が城門を開いて我々の軍が中に進入できた。

城門が開いた以上、それ以上の防御が無意味だと判したのか、誰も抵抗しなかった。

シュタウフェン伯爵は自ら敗北を認めて、今は臨時監獄に保護されている。

父上と俺はお前を見つけて治療し、今はシュタウフェン伯爵の自宅の中だ。

グレイアム伯爵は王陛下の命令にい、シュタウフェン伯爵の息子を探している」

 

「俺と一に城壁をり越えた兵士たちは…?衝車を守っていた兵士は…どうなった?」

 

ジフリットはベッドから起き上がろうとするエドウィンを止めて、ベッドに寝かしながら答えた。

 

「君と一に城壁をり越えた兵士の中で生きったのは一人だけだ。

衝車を守っていた兵士たちはみんな無事だった。

それ以上は気にしなくていいから、今はゆっくり休んだ方がいい。

君を見つけてすぐに治療を始めたが、出血が多いから気をつけた方がいい。

父上がすごく心配していた」

 

エドウィンをベッドの上に横にさせて、もう一回布団を整えた後、

ジフリットはバルタソン男爵にエドウィンが意識を戻したことを知らせに行くと、部屋から出た。

エドウィンはもう一回起きようとしたが、背中から激しい痛みを感じたので諦めた。

右側にある窓の外から夕日に染まって赤くなった雲が見えた。

まるで花びらのように赤くなった雲からは、血の匂いがするような気がした。

過去にも人に剣を向けたことは何回かあった。

正式な聖騎士になる前に国境での戦いに参加した事がある。

大体があまり強くないモンスターの狩りだった。

海賊や山賊と戦った時もあったが、彼らに向かって剣を振るうことに迷いはなかった。

しかし、今は自分の剣で死んでいった命について心の片隅が重たく感じられる。

生き残る為には他に選ぶ道はなかったとしても、

少しの迷いもなく彼らに剣を向けた自分自身に少し恐ろしさを覚えた。

 

「エドウィン、体の調子はどうか?」

 

ドアが開き、バルタソン男爵とジフリットが入ってきた。

体を起こして答えようとしたが、背中からの痛みで横になってしまった。

父は心配そうな顔で息子を見つめた。

 

「大丈夫です。すぐ治ると思います」

 

エドウィンは背中の痛みを我慢しながら、平気な顔を作って答えた。

ジフリットはベッドに近づき、エドウィンの額から汗を拭きながら話した。

 

「母上がエドウィンの怪我について知ったら驚きますので、

できれば怪我が治るまで帰らない方がいいと思います。」

 

「そうだね。心配するだろうな。しかし、静養にいい場所があるのか探してみないと」

 

ノックの音がし、グレイアム・ベルゼン伯爵が入ってきた。

 

「バルタソン君の意識が戻ったとの連絡をいただきました。バルタソン君、体の調子はどうですか?」

 

「おかげさまで、大丈夫です。ご心配をかけまして、すみませんでした」

 

「何を言っていますか。バルタソン君の活躍で今回の戦闘が計画通り早く終わりました。

お礼を言うのはこちらです。」

 

「いいえ。やるべきことをやっただけです。それより、ここはどうなりますか?」

 

「国王陛下の命により、シュタウフェン伯爵とその息子、一族は全員処刑となりますが…」 

 

言葉濁してしまうグレイアム伯爵にジフリットが聞いた。

 

「何か問題でもありますか?」

 

「はい… 実はシュタウフェン伯爵の息子の姿が見つかりません」

 

「城内にいなかったんですか?」

 

「今まで兵士たちに城内の隅々まで探させましたが、何も見つかりませんでした。

ワーウルフを閉じ込めておいたと思われる地下監獄を見つけましたが、空っぽでした」

 

「時間を稼ぐつもりでしたね」

 

「はい。シュタウフェン伯爵が徹底的に防御に集中したのは、

息子を遠い所まで逃がす時間を確保するつもりだったと思います。

伯爵は息子を城から逃したのも相当前でしょう」

 

「ということは…」

 

グレイアム伯爵は頷きながら、沈痛な口調で話した。

 

「シュタウフェン伯爵の罪はもっと重くなり、死刑は免れられないでしょう。」

 

 

第7章15話もお楽しみに!
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