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第八章 夢へと繋がる鍵 第8話 09.12.30

 

主神オンがエドネの為にロハン大陸を作り、様々な命を創造したときには、善悪の区別はなかった。

しかし、下位神たちが個々の種族を創るとき、善と悪が出来てしまった。

悪魔たちが中心になって世界の善を破壊し、悪に染めていこうとした。

主神オンは、古代の悪魔たちを巨大な塔の中に封印し、大地に埋めておいた。

悪魔たちのリーダー各である15匹の古代の悪魔と彼らの子孫が封印されてから世界は平和を取り戻した。

しかし、オンが消滅して時間が経ち、悪魔を封印していた塔も魔力を失ってしまい、

レブデカとパルタルカの間の大地を突き破り、高くそびえ立ってしまった。

 

魔力を失った塔は悪魔を封印できなくなった。

溶岩を噴出する火山のように塔からは悪魔が飛び出した。

大陸の国境を守っていたドラゴンたちは、その塔を呪いの塔と呼んだ。

本来持っていた聖なる力を失った塔は悪魔の呪いで満ちていた。

下位神たちも悪魔たちが解放されたことを知っていたが、大陸の終末のために黙認していた。

古代の悪魔が大陸の各地に広がり、そのうちのひとりに

千の顔を持っていると知られているアヴァドンという悪魔がいた。

 

「アヴァドンが千の顔を持っていると言われる理由はご存知ですか?」

 

気持ち悪い笑みを浮かべながらアドハルマが大長老に聞いた。

 

「さあ…体に顔がいっぱいついているんだろうか?」

 

「ククク…それもできるかもしれませんね」

 

「何がいいたいのか、分からないが」

 

せきをするような笑い声を出しながら、アドハルマが説明した。

 

「ククク…アヴァドンの本当の姿を知っている人はいません。

 

彼は自由自在に変身するからです。

黒魔法を使っているため、出会った人で見える姿も全部違います。

例えば、朝に会った人がアヴァドンは人の顔をしてトラの体をしていました。

口からは火の塊を吐き出していましたと言っても、

夕方会った人はアヴァドンは魚の頭に蝶々の羽根がついていました。

吹雪で攻撃してきましたというのです。

それでアヴァドンは千の顔を持っていると言われるのです」

 

「なるほど」

 

「だから、大長老の言うとおりに、ひとつの体に千の顔を持つ姿も可能でしょう」

 

アドハルマは楽しみながら説明しているが大長老カルバラの表情は冷たかった。

 

「アヴァドンが千の顔を持っているかどうか別に興味がない。

俺が知りたいのはドビアンが勝利できるようにお前がアヴァドンを捕まえられるかどうかだ」

 

アドハルマが醜くなっている足を指差しながら言った。

 

「この足の代わりに得た実力です。キッシュがアヴァドンと出会う前にドビアンさんが勝利します」

 

「良かろう。試合は明日の朝、呪いの塔の前から始まるんだ。今回こそ絶対勝利するんだ」

 

「試合が開始したら、誰もいない場所で私に連絡するとき使う黒い水晶玉を埋めてください。

誰も知らないうちにドビアンさんの手にアヴァドンが入っているはずです」

 

悪魔の魔法士は、身にまとっていた赤い布を振るった。

二人を保護しているように円になっていた赤い霧が布に吸い込まれていた。

赤い霧が全部消えた頃にはアドハルマも姿を消していた。

 

大長老はベッドの上で横になって、アルメネスの魂と初めて出会った時のことを思い出した。

あれは運命としか説明が出来ないだろう。

当時、アルメネスの体からデカン族が生まれた直後で、みんな迷っていた。

殺されたドラゴンの体から生まれたデカンの心は、怒りと悲しみで満ちていた。

アルメネスの激しい思いがデカン族に繋がったためだ。

カルバラも同じだった。カルバラはどうしようもない感情に巻き込まれあてもなく歩いていた。

熱が上がり、めまいを感じていた。

 

シャマル川の下流に着いた頃には体全身に力は入らず、一歩も動けない状態だった。

死は確実に近づいていたが、悲しみと怒りに満ちていた。

カルバラは川の流れに身をゆだねた。彼は海まで流れていき南方の海辺に着いた。

海辺の砂が感じられたが、カルバラは目を閉じたまま動かなかった。

そのとき、誰かの声が頭の中から響いてきた。

 

起きろ。ドラゴンの末裔よ…

 

カルバラは目を開き、辺りを見回した。

しかし自分以外に動くものは見当たらない。

周りには巨大なドラゴンの遺骨だけがある。

白いドラゴンの骨が海辺あちこちに散らばっていた。

 

見えるのか…我々の死が…

 

「だれ…?」

 

俺はアルメネス…ドラゴンの末裔よ…我々の死を分かってくれ…

我々の涙を飲み、我々の怒りを食べろ…決して神たちを許してはいけない…

 

「私も…私も神たちに復讐したいです!しかしどうすればいいのでしょうか?

我々の力は神にはとても及びません」

 

崇高な犠牲が大きな勝利への道となる…お前らの体と俺の魂が出会えばアルメネスとして復活できるだろう。

俺の欠片を探せ、ドラゴンの末裔よ。

 

「あなたの欠片はどこにありますか?」

 

カルバラの質問には回答はなかった。

頭の中から響いていた声は消えていた。

しかし、もう十分だろう。

体の奥から渦巻いていた怒りと悲しみは強い力となってカルバラの体を起こしてくれた。

アルメネスの復活のための動くことができた。

カルバラは目を開いて、窓の外に広がる黒い空を見ながらもう一度覚悟を決めた。

 

「ドビアンを必ず王にするのだ。アルメネスの復活のために…」

 

 

 

第8章9話もお楽しみに!
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