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第九章 運命の渦巻 第3話 10.03.10


 

「ジフリト、気をつけろ。私がデル・ラゴス大司祭とは言っても国王陛下の臣下であることを

忘れないで欲しい。何がいいたいか分かるか?」

 

ジフリトはお祈りをあげるように両手を合わせながら答えた。

 

「はい。心からお礼申し上げます」

 

大司祭は切なさを帯びた目で、窓の外を見下ろした。

 

「もしかして、彼が目撃した全てが神様の意図かも知れない。

我々では想像もできない高い所の意志が彼に何かをやらせる為に準備した

試練かもしれないと思うようになった。しかし、エドウィンが真実をしゃべっても

このデル・ラゴスで信じてくれる人はいないと思う。

恐ろしい真実を受け止める為には勇気が必要だから…」

 

 

深くタメ息を吐いた大司祭は窓の外に向いていた視線をジフリトに戻して、

簡単なお祈りをし、会話が終わったことをあらわした。

 

「ロハよ、すべては彼方の意志に従うことであるように」

 

ジフリトは大司祭の部屋からでて、国立王室図書館へ向かった。

グレイアムがシュタウヘン伯爵の死刑式であったことについて何の報告も出してないにもかかわらず

アインホルンのみんなが知っている。

 

 見ていた人が多かった…

 

バルタソン男爵に不満があった貴族たちは、自分の上司であり伯爵であるグレイアムに

反発したエドウィンを処罰するべきだと声をあげていた。

グレイアム本人は何も言っていないので、具体的な話は進まなかったが、

噂はだんだん広がり、国王の耳にまで入ったようだった。

いつもジフリトのことを心配してくれた大司祭は現状を伝え、助言した。

 

もしかして、これがエドウィンに定められた運命かもしれない。

真実を追究する彼の情熱はやがては彼自信まで燃やしてしまうかもしれない。

この時代は彼が真実に近づくことを許さず、命まで奪ってしまうだろう…

あえてエドウィンが一層真実に近づけるように手伝うことが俺の役目かも…

 

ジフリトは苦い唾を飲んだ。口の中が砂漠の砂を飲んでいるように乾いていた。

国立王室図書館についたジフリトは、ゆっくりと司書に近づいた。

ヘルラックに関する資料がないっていうことは嘘だ。

クラウトが謀反を起こしデル・ラゴスから出てしまうまで、二人の影響は大きなものだった。

だから、二人の資料は重要なものでありながら、秘密にするものになったのだ。

アインホルン大神殿にいるジフリトがヘルラックに関する資料の閲覧を許可されたのも1年前だった。

しかし、資料をみたいと思えなかった。

ヘルラックとクラウトはそんな存在だったのだ。

ジフリトは始めて秘密の資料を閲覧することにした。

そして、エドウィンに伝えるのが本人の役目だと決めたからだ。

もしかして、これでエドウィンが墜落するきっかけになるとしても…

ジフリトは緊張で硬くなった顔で司書に話し始めた。

 

書名のない資料を閲覧したいと思っています」

 

書名のない資料という言葉をきいた司書の顔は真っ青になった。

 

「今から…ですか?」

 

ジフリトは何も言わず、頷いた。司書れるを拭きながら、机の上に置かれていたランプを持ち

ジフリトについてくるように指示した。

司書は隅っこにある小さいドアの前に向かった。

ドアの前で足を止めた彼は、再確認するようにジフリトを振り向いて

彼の揺れない表情をみてから、首にかけていた厚い紐の先についている鍵を出した。

長い間鍵を迎えたことがなかった錠は重い音を立てた。

司書はランプを渡しながら、話した。

 

「この中で欲しがっているものが見つかると思います。

資料を探して後には私に声をかけてください」

 

「分かりました」

 

司書はジフリトが部屋にはいるとすぐドアを閉じた。

部屋の中には古い埃のにおいがしていた。壁には本棚でいっぱいになっていたが、

あまり大きくない部屋だったので、本は多くはなかった。

ランプを近づけ、タイトルを調べてみた。

あまり時間が経たないうちにヘルラックに関する本を探すことが出来た。

いや本というより、巻物のようなものだった。

ジフリトは真ん中に置かれていたテープルの上に広げた。

書いてある文章はがっかりするほど短いものだったが、内容は衝撃的なものだった。

ジフリトは息があらくなるのを感じた。

何回も繰り返して内容を読んだジフリトは、混乱状態で部屋から出た。

一刻でも早くエドウィンに内容を伝えたい気持ちばかりだった。

 

司書に向かっていたら彼と話をしているエルフの女性が目に入った。

彼女は司書に何かを聞いていたが、彼は固い表情で首を横に振っていた。

手を伸ばすと届くくらいに近づいたら、会話の内容が聞こえてきた。

 

「本当に何もないんですか?」


「はい、ありません。前も探している人がいたので、全部探してみましたが、

ヘルラックに関する資料はありませんでした」

 

ジフリトの目が大きくなった。ヘルラックを探しているエルフ。

エルフは理解できないように顔を傾げながら、離れていった。

ジフリトは司書にランプを渡して、急いで彼女の後を追った。

彼女はがっかりした表情で図書館を見回ってから外に出た。

ジフリトも彼女の後を追って、図書館の外に出た。

周りに誰もいないことを確認した後、彼女に声をかけた。

 

「何のことでヘルラックに関する資料を探しているのですか?」

 

彼女は驚いた顔でジフリトを見た。

 

「私がヘルラックに関する資料を探していることを、どうして知っているのですか?」

 

「先ほど偶然、彼方と司書が話しているところを聞きました。無礼なことでしたら、お詫びを申し上げます」

 

「大丈夫です。ちょっと驚いただけですので…

 

しかし始めてあった人に何かを質問する前に、自分の紹介が先だと思いますが…」

 

ジフリトは一歩下がり、丁寧に挨拶しながら、自分を紹介した。

 

「失礼いたしました。私はジフリト・バルタソンと申します。アインホルン大神殿の司祭です」

 

彼女の顔に驚きとうれしさが浮かんできた。

 

「バルタソンさん?もしかして、エドウィン・バルタソンを知っていますか?」

 

「はい、私の弟です。エドウィンとお知り合いですか?」

 

「そうですね…本当に短い時間を一緒にしただけだったので

バルタソンさんが私のことを覚えていらっしゃるか、自信はありませんが…

あ、すみません。私の紹介を忘れていました。私はトリアン・パベルと申します。」

 

 

第9章4話もお楽しみに!
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