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第九章 運命の渦巻 第5話 10.03.24


 

グベルマン・アルコンは絵に描かれている女性のシルエットを撫でていた。

肖像画に描かれている娘は穏やかに微笑んでいるが、

死んだ娘を見ている父親の目元には涙がにじんでいる。

 

「アンジェリーナ…アンジェリーナ…フロンとは会えたかい?

年寄りの父だけを残して、みんな逝ってしまったかい…」

 

アンジェリーナの相手が国王ロシュ・リオナンということが分かった時、グベルマン・アルコンは必死で反対した。

若い頃、王宮で過ごしたことがあるので、王宮について知っているのだ。

裏切りと陰謀で満ちている王宮で娘が国王の愛人っていうことが知れたら、

ただでは終わらないだろう。

しかも王妃がカノス・リオナンを出産したら娘は捨てられるはずだと、

他の男性と結婚させるために説得したのだ。

しかしアンジェリーナは自分の意思を折れず、最後には国王であるロシュ・リオナンが

二人に恋愛を認めてほしいと自分の前でひざまづいたのだ。

 

国王が地位の低い貴族の前で膝をつくことは、自分のフライドや命まで全部預けるということだ。

結局グベルマンはアンジェリーナと国王の愛を祝福するしかなかった。

アンジェリーナはやがて王宮で暮らすことになった。

二人の恋愛を認める瞬間から娘がいずれかは誰かに殺されることを予感していた。

しかしながら、実際にアンジェリーナがカノス・リオナンの軍に連れて行かれ、

孫のフロイオン・アルコンの死亡まで聞いてしまうと胸の中が絶望と哀しみでいっぱいになってしまうのだ。

 

「父上…」

 

振り向いてみると、ジオバンニが真っ白になってドアの前に立っていた。

 

「何だい?まるで幽霊にでも出会った顔ではないか」

「父上…フロンが…フロイオンが帰ってきました」

 

ブベルマンは一瞬自分の耳を疑った。死んだと言われた孫が帰ってきたということは

あまりにも意外なことだったのだ。

 

「今…何といった?」

 

「ただいま、お爺さん」

 

ジオバンニの後ろから誰かが前に歩きでながら話している。

一人は異種族の女性で、もう一人はフロイオン・アルコンだった。

グベルマンはあまりにもびっくりして手に持っていた娘の肖像画を落としてしまった。

フロイオンはグベルマンについてきて、落ちているアンジェリーナの肖像画を拾った。

 

「この肖像画、まだ持っていましたか」

 

「ふ…フロイオン…フロイオン…」

 

グベルマンはわめき声のようにフロイオンの名前を呼びながら、息子を抱きしめた。

 

「はい、お爺さん。フロイオン・アルコンが帰ってきました。

ご心配をおかけいたしまして、申し訳ございません」

 

フロイオンはグベルマンの手にアンジェリーナの肖像画を渡してあげた。

グベルマンの目からは涙が流れていた。

 

「わしは王宮からお前が死んだという話を聞いた…

生きて帰ってくるとは…神様はまだわれわれを見捨ててはいないんだ…」

 

「いいえ…神様は私たちを見捨てています。私の命を救ってくれたのは異種族の人々でした。

後で詳しく話しをします。その前に紹介したい人がいます」

 

フロイオンはジオバンニの隣に立っているライを紹介した。

 

「私を護衛することになりました。

同時にジャドル・ラフドモンが私を殺害しようとしたことを証言してくれる人でもあります」

 

「ジャドル・ラフドモンがお前を殺そうとしたと?」

 

ジオバンニの驚いた声が部屋中に広まった。フロイオンは頷いた。

 

「ジャドル・ラフドモンが私を殺そうとしたことは国王の意思だと思います」

 

「そんな…どうすればいいんだ…」

 

グベルマンは絶望そうな顔で嘆いた。フロイオンはグベルマンの手を握りながら話を続けた。

 

「イグニスに帰る前に心を決めました。私は母親のようにただやられることだけは、決してしないつもりです」

 

「どうするつもりかい?」

 

「カオス・リオナンを王座から降ろします。そして私が国王になります」

 

フロイオンの話に一瞬唖然としてしまった。

 

「フロイオン…」

 

「子供の頃…母親があいつを引きずりながら話した言葉があります。生き残ろうでした。

やがて私は分かったのです。私が生き残るためにはいつまで避けても終わらないこと。

敵に立ち向かうべきだということです」

 

「その通りだ」

 

ジオバンニがフロイオンの肩を握りながら話した。

 

「私はずっと待っていた。力になれることがあったら、何でもいってくれ」

 

「叔父さん、ありがとうございます」

 

「ジオバンニ…フロイオン…お前たちは知らない。彼らの残酷さと力が…

なぜ火に飛び込む虫になろうとするのか…わしはもうたくさんだ。これ以上誰一人も失いたくないんだ。

どうか考えなおしてくれ」

 

泣き声で息子と孫を説得しようとしてみるが、フロイオンは握った手にもっと力を入れながら話した。

 

「カノス・リオナンは恐ろしい政治で、すでにたくさんの敵を作っています。私たちには出来ます。

そして…私はもう避けることができません。もうたくさん傷ついてきました」

 

グベルマンはフロイオンの顔から、ロシュ・リオナンの愛をあきらめることができないと言っていた、

娘の昔の顔を見た。今フロイオンの目は、何の恐れもなく自分を見つめている娘の目と同じだ。

フロイオンの決心が固いことが十分分かった彼はそれ以上反対することが出来なかった。

 

「フロックス神がいつも共にありますように…いい国王になってくれ、フロイオン。

アンジェリーナがお前を見守っていることを忘れるな」

 

「はい」

 

フロイオンはジオバンニの顔を見ながら話した。

 

フロイオンは顔を上げてジオバンニを見つめながら話した。

 

「まずカノス・リオナンに背を向けた貴族たちを味方にする必要があります。

王宮ではまだ私が生き返ったことを知りません。秘密裏に味方になれる貴族を集めるためには

叔父さんの力が必要です」

 

「分かった。だれか思いついた人でもいるのか?」

 

「ゴット・シャルク将軍にあってください」

 

 

 

第9章6話もお楽しみに!
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